Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのPublication Networkチームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

大転換を発表したFacebook メディアは「いいね!」を収益化できる?

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こんにちは、Publication Networkチームの田島です。Publication Networkプロジェクトのプロダクトマネージャーと、SmartNewsのユーザーとコンテンツのデータ分析を担当しています。 


今回は、特に米国において多くのユーザーの情報源であるFacebookの開発者カンファレンス「F8」に参加してきました。媒体社がいかにFacebookを活用できるか、という視点で私が感じたことを書きたいと思います。

 

「プライベート」への回帰から「コミュニティー」の担い手へ

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マーク・ザッカーバーグCEOの基調講演

初日の基調講演でマーク・ザッカーバーグは「Today we are going to talk about building a privacy-focused social platform(今日は、プライバシーを重視したソーシャルプラットフォームの構築について話していきましょう)」と口火を切りました。

 

米国大統領選での世論操作、フェイクニュース、個人情報の不正使用といった大きな問題を抱えるFacebookですが、「The future is private」というメッセージを掲げ、Facebookアプリのメジャーアップデートを行いました。FB5と呼ぶ新しいUIを備えたアプリのコンセプトは「communities as central as friends(友達と同じくらいコミュニティーが中心となる)」です。

2018年にアナウンスされたFacebookニュースフィードの新方針によれば、Facebookニュースフィードのアルゴリズムはユーザーの“会話”と“意味のあるインタラクション”を促進するコンテンツを優先的に表示するとしています。これにより、友人や家族といった身近な存在の投稿の比重がニュースフィード上で再び高くなりました。

一方で、Facebookページのコンテンツは記事URLの自動投稿のみで済ませていたりした媒体のトラフィックは減少しやすくなり、逆に記事URLに限らずテキストや写真の投稿を組み合わせてユーザーと会話をしていた媒体のトラフィックは上昇しやすくなったと考えられます。

 

2018年に発表された「プライベート」への回帰は、Facebookの原点に立ち戻るものであり、その背景は信頼性の乏しい大量の情報が誰にもコントロールできずにFaceebookで広がっていた状況に対処せざるを得なかったことでしょう。実際にアルゴリズムの変更だけでなく、同時にFacebookのコンテンツポリシーや、Facebook上でビジネスをする上での審査基準を相次いで厳格化しました。Facebookが全社的に問題に取り組んでいた様子が伺えます。

 

2019年はその「プライベート」の境界を押し広げた「コミュニティー」がコンセプトとなりました。これは、2017年6月に変更されたFacebookのミッションステートメント「give people the power to build community and bring the world closer together(コミュニティーづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する)」をプロダクトに落とし込んだ自然な流れと言えるでしょう。

2017年から2018年にかけて、Facebookは「動画」機能によりコミュニティーの構築を実現しようとしていましたが、2019年は「グループ」機能がFacebookのミッションを達成するための本命として開発が進んでいきそうです。

 

FB5の新しいUIにより、ユーザーは興味のあるグループを発見しやすくなりましたが、これは、単にFacebookグループタブが改善されたことを意味するだけではありません。F8では同時に、「マーケットプレイス」「Today In」などの他の機能もグループを中心にUIを変更し、Facebookアプリ全体をコミュニティー、そしてそれを実現するグループ機能中心に再構築すると発表しました。

 

Facebookを活用する媒体は、このグループ機能で読者イベントを運営するだけでなく、ファンとの絆を醸成していくツールとして今後どんな機能が加わり、どんな体験ができるようになるかウォッチしていくと良いでしょう。

 

インプレッションビジネスからファンビジネスへ

媒体社にとって、Facebookでの直接的あるいは間接的に収益をあげる方法は、大きく下記の3つだったかと思います。

  1. 本体サイトへ送客すること
  2. タイアップ記事をFacebook Audience Networkに配信すること
  3. インスタント記事上で収益化すること

これらの広告ビジネスは、基本的にはインプレッションが価値を持ち、より多くの人にコンテンツを届けることが重要となります。一方で、Facebookは「いいね数」や「コメント」などのいわゆるエンゲージメント指標をあげることを推奨していました。媒体社にとっては、これらの数値は広告主へのアピールにはなりますが、直接的には収益に結びつかないことの方が多かったことでしょう。

 

今回のコミュニティーへのフォーカスから予想し得る展開は、Facebookグループが参加費のようなユーザー課金機能を持つことです。より深く一人一人のユーザーの心を掴んでいくことが、収益化に直接影響するようになります。

つまり、Facebook上で活動する事業者は、記事を大量に配信・露出することによって収益化するのではなく、記事に限らずテキストや写真の投稿、コメントを通じてユーザーをファンにしていき、グループに参加させることで収益化する「ファンビジネス」のモデルをFacebook上で展開できるようになる、と私は考えています。

 

一方でFacebook自身は大量のトラフィックをもたらすニュースフィード上で、ビッグデータを元に広告ビジネスを依然推進していくでしょう。しかし、そこは媒体社のコンテンツが中心となるわけではありません。ユーザーの投稿と媒体社のコンテンツは、ファンとのエンゲージメントを元に平等にランク付けされます。Facebookに興味のある媒体社は、ファンの声を聞き、ファンの声に応える活動をFacebookで続けることが必要になっていくでしょう。

 

媒体社にとって、Facebookはコンテンツの拡散エンジンなのか、それとも読者のスティッキネスを測るツールとなるのか、注視していきたいと思います。

 

写真で見るF8カンファレンス:ARとVRが盛り上がり

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F8会場の様子

このほか今回のF8では、メッセンジャーがFacebookファミリーのDM機能をすべて繋ぐハブになる発表や、新型VRヘッドセット「Oculus Quest」と「Oculus Rift S」のお披露目、ARエフェクトを作成するツール「Spark AR Studio」の使い方、Facebookの画像・動画認識AIのデモなど様々な発表がありました。

また、会場の各所にARのデモ用ポスターが貼られており、InstagramのARフィルターを起動すると画面の中で動いているのを見ることができ、よりARが身近になってきたなと感じました。

 

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インタラクティブな機能が紹介されたメッセンジャー

メッセンジャーアプリは、企業のカスタマーサポートを強化するツールとしての実例が紹介されていました。QRコードを読み込んでメッセンジャーを開き、ボットによる自動案内のもと目当ての商品にたどり着けるデモを試してみて、同じプラットフォーム上で発見から購買まで完結するのは便利と感じました。特に個人間のやり取りの主流がメッセンジャーである欧米でのインパクトはそれなりにあるのではないでしょうか。

また、メッセンジャーの友人とライブ通話できる、ビデオコミュニケーションデバイスの「ポータル」のデモでは、話者の特定や、カメラの自動追尾、ARフィルターなど、FacebookのAIの画像・動画認識能力の高さを感じました。

 

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行列の絶えないOculus Questの体験ブース

Oculus Questの体験ブースは常に行列が出来ていました。初日の基調講演で、Oculus Questの無料コードを参加者全員に配布するとマーク・ザッカーバーグが発表した時が、今回のカンファレンスで一番盛り上がった瞬間かもしれません。

 

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アフターパーティーになぜかタロットカード占い

 F8のアフターパーティーでは、シリコンバレーらしい快晴のもと、なぜかタロットカード占いのブースが出ており、大盛況でした。

 

著者紹介

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田島将太(たじま・しょうた)。東京大学卒業。シリコンバレーでセンサー開発に従事。その後2016年、スマートニュース株式会社にジョイン。メディアパートナーとのアライアンス、およびデータ分析を担当した後、メディアパートナーに対する新プロジェクトを推進。現在、スマートニュースにて、Publication Networkプロジェクトのプロダクトマネージャーを務める。