Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

「消費増税」読まれ方を分析 スマニューで注目される3つのアイデア

こんにちは、スマートニュースの田島将太です。

2019年10月1日に実施された消費増税について、SmartNews上ではどんな記事がどれくらい読まれたのか調べました。そこから、次に記事を書く時に役立つかもしれないポイントとアイデアを以下のように3つ出しましたので、ぜひ参考にしてみてください。

 

調査にあたっては、2019年8月25日から11月17日までの増税実施前後それぞれ1カ月と1週間に公開された記事を対象としました。消費増税に関係する記事かどうかは「タイトルに消費増税に関連するキーワードが含まれていたかどうか」というざっくりした基準で判定しています。なお、これはあくまで分析のための判定であり、SmartNewsアプリでの掲出アルゴリズムとは一切関係ありません。

 

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横軸に日付、縦軸にページビューをとり、消費増税に関してよく読まれたトップ50記事には色をつけています

 

1. キリよく1カ月前のタイミングは注目が集まりやすい

グラフを眺めると、お盆明けから徐々に滞在時間は伸びていましたが、大きく注目が集まったのは、『増税前に「買ってはいけない家電」「買って得する家電」の見分け方』(マネーポストWEB)の記事を皮切りに9月1日からであることが見て取れます。この日、特に増税についての新情報はありませんでした。しかしながら、ちょうど1カ月前ということでメディア各社が記事露出を増やし、読者も増税自体に関心を高めたのだろうと私は想像しています。このように、あらかじめ発生する出来事が定まっている場合、ぴったり1カ月前というタイミングは、自然と注目が集まる可能性があり、狙い目かもしれません。

 

その後、9月の1カ月間はコンスタントに注目が集まり続けますが、10月2週目からは急速に関心が薄れていく様子がわかります。公開された記事数も、世間の関心に連動するように、増税前の9月(2,605記事)に比べて、増税後の10月(1,837記事)は3割ほど減少しています。



2. アルゴリズムの重複排除を避けた独自の切り口を狙う

今回の調査で特徴的だったのは、増税が実施された当日も複数の記事に注目が分散されていたことです。速報から入る事件・事故などの場合、SmartNewsでは通常一つの記事にページビューが集まり、注目が寡占状態になりやすくなります。これは、SmartNewsのアルゴリズムに重複排除の仕組みがあり、同じトピックで面が埋まることを防いでいるためです。

 

今回それが起きていなかったのは、増税実施は読者も了解済みの確定事項であり速報性が低かったため、各媒体がそれぞれ独自の切り口で増税を紹介したためでしょう。つまり、同じ消費増税という事象でも、異なる切り口から紹介することで重複排除されずに読者に記事を届ける可能性が高まります。

 

特に、9月上旬に話題になった『牛丼3社、軽減税率対応分かれる すき家と松屋「統一」 吉野家「2段階」』(毎日新聞)の記事は、具体名を入れた身近な話題から軽減税率を取り上げており、切り口とタイトル付けが非常に上手だなと感じました。タイトルから受ける期待に沿って滑らかに本文が展開し、深掘りしていく構成になっていましたが、この書き方がスマホで記事を読む際の体験として良いことは、こちらの記事でも取り上げています。

www.mediatechnology.jp



3. 話題のピークを避けた深掘り記事で注目を独占する

消費増税の実施当日ではない日に、非常に多くの注目を獲得しているのがビジネス誌です。例えば9月8日の記事『ジム・ロジャーズ「消費増税はクレイジーだ」』(東洋経済オンライン)のように、公開された記事数が多く競争の激しい当日を避けて深掘り記事を発信することで、消費増税に関するページビューを独占することに成功しています。今回もっとも多くのページビューを集めた『消費税が18%? 帰宅後、レシートながめて気づいた』(朝日新聞デジタル)も、増税実施から3週間近く経った後に公開されて、注目を独占していることがわかります。

 

もちろんスクープは非常に重要ですし、当日の方が読者全体の注目は集まりやすいでしょう。しかし、個別の記事を見ていくと、この例のようにイベント当日や速報から数週間経った深掘り記事の方がページビューや滞在時間を獲得する事例を数多く見受けます。

  

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横軸に日付、縦軸にページビューを発生させた読者の平均年齢をとっています

 

また、こちらは事前に想定することが難しいですが、時間の経過とともに読者層が変化することもポイントです。上記のグラフを見てみると、増税実施翌日以降の数日間に急激に読者の平均年齢が下がっていたことがわかります。この期間に若年層に読まれた記事を分析すると、軽減税率によるトラブルを面白おかしくまとめた記事がよく読まれていました。



SmartNewsは、国内最大規模である3,000以上のパブリッシャーと提携してコンテンツを収集し、独自のアルゴリズムにより自動的に配信しています。この仕組みの中で日々発生するコンテンツと閲覧行動のビッグデータは、通常はアルゴリズムを改善するために使われていますが、パブリッシャーに有益なインサイトを還元することもできるのではないかと考えています。

  

著者紹介

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田島将太(たじま・しょうた)

メディア事業開発

2016年東京大学教養学部卒業。2016年9月スマートニュース株式会社に入社。メディアパートナーとのアライアンス、データ分析、およびPublication Networkプロジェクトのプロダクトマネージャーを務める。

 

本記事は筆者と編集部の独自の取材に基づく内容です。スマートニュースの公式見解ではありません。