Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

新しいGoogleアナリティクス「GA4」、変化とその価値

アクセス解析ツールである「Google アナリティクス」。多くの企業で利用されており、皆様の会社も導入しているのではないでしょうか。そんなGoogle アナリティクスに新しいバージョン、「Google アナリティクス4 (以下:GA4)」が登場して1年半経ちました。また今までのGoogle アナリティクスの計測停止が2023年7月1日(有償版は2023年10月1日)とアナウンスされました。

「GA4って聞いたことはあるけどなんか全然画面が違うんだって?」「今までのGAと何が違うの?」「導入することのメリットは?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。本記事ではメディアサイトにとってのGA4導入の価値や注意点を、HAPPY ANALYTICSの代表取締役で、Googleアナリティクス関連の著書も複数上梓している、小川卓氏が紹介いたします。(編集部)

GA4は今までのGoogle アナリティクスと何が変わったのか?

GAからGA4は非常に多くの変更がありました。計測の仕組みから、画面から、取得できるデータまでGoogle アナリティクスの15年以上の歴史の中で最も大きな変化が発生しました。(そのため今回初めて、名称もGA「4」(第4世代)に変わりました。

いろいろな違いがあるのですが、メディア運営者にとって重要な変化は2つです。 1つは「今まで取得に実装が必要だったデータが、管理画面だけで計測できるようになった」。もう1つは「指標の定義が変わり、新たな指標が増減した」になります。どちらもメディアにとって影響が大きい内容になりますので解説を読んでいただき、今後どうすればよいかについて最後に紹介いたします。

自動で計測できる項目が増えた

GA4が自動設定で計測できる項目が以下の通り増えました。

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管理画面内にある「拡張計測機能」

1. スクロール数

ページの長さの90%まで辿り着いた時に自動で計測されます。しかし、多くのメディアサイトは関連記事や広告等が記事下にあり、記事の読了が80%くらいの位置で離脱してしまいます。そのため、本機能では望むような計測ができないとみています。よって、これまで通り実装を伴いますが、任意の箇所でスクロール率を取得したり、読了率を計測したりするのが良いでしょう。

2. 離脱クリック

ユーザーが自社ドメイン以外のリンクをクリックした時に、どのページでどのリンク先のリンクをクリックしたかを自動で取得してくれます。例えば記事広告でクライアントサイトへ誘導できた数や、別のGAが入っているコーポレートサイトへの遷移数なども見られます。あくまでも自サイトから外部サイトへの遷移になりますが、自動で取得できるので便利です。

3. 動画エンゲージメント

自社サイトに埋め込んだYouTube動画の再生数や、何%まで再生したかなどの情報を計測できます。現在はYouTubeのみの対応となっていますが、しっかり動画が見られているのか?またその閲覧がユーザーの行動に影響を及ぼしているのか?これらを把握するのに便利です。

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例)動画ごとの再生回数と再生人数

4. ファイルのダウンロード

ユーザーがリンクをクリックしたファイルをダウンロードした時に、どのページでどのファイルが何回ダウンロードされたかを計測する事ができます。セミナー資料やIR情報などなにかしらファイルに対してアクションを起こして欲しい時にこれらのデータも自動で取得できます。pdf/xls/doc/ppt/txt/csv/zipなどを含め数多くの拡張子に対応しています。

今まで紹介してきた追加機能の公式ヘルプは以下URLからご覧いただけます。 https://support.google.com/analytics/answer/9216061?hl=ja

指標の定義が変わり、新たな指標が増減した

メディア的にはこちらの変化のほうが大きいかもしれません。それぞれ紹介をしていきます。

1. 初回流入専用のレポートが用意された

訪問ごとの流入元だけではなく、初回ユーザー獲得の流入元のレポートが独立して用意されました。

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ユーザー獲得=ユーザー初回訪問時の流入元、トラフィック獲得=全ての訪問の流入元

サイトにとって新規読者の確保は大切です。こちらのレポートを利用することで簡単に新規獲得の効果を計測することが出来ます。

2. 直帰率がなくなりエンゲージメント率が追加された

GA4からは「直帰数(率)」(1ページだけみた離脱した数や割合)という概念がなくなりました。ページやサイト全体の直帰率を見ることはできません。メディアによっては重視していた項目かもしれません。ただ直帰率はユーザーの行動実態を正しく表していなかったのも事実です。

例えばメディアサイトで、最初に5行だけ出てきて「続きを読む」ボタンを押して記事本文のページに移動するサイトと、記事が最初から最後まで読めるサイトでは直帰率を比較することに意味がありません(前者のほうが必ず直帰率が低くなる)。またページ分割の有無によっても直帰率は大きくは変わります。さらに、5秒見て離脱した人も、5分見て離脱した人も同じ直帰扱いになってしまいます。

直帰率はわかりやすい数値ですが適切なものさしではありませんでした。そこでGoogleは(想像するに)この指標はあまり使うべきではないと判断して意図的に外したのでしょう。では、今まで見ていたサイトはどうすればよいのか?GAで見続けるという選択肢もあるでしょうが、GA4が新たに用意したのが「エンゲージ数(率)」になります。

エンゲージは「婚約」という意味でも使われますが、ここでは訪問時に「サイトと関係性を持った」という意味合いになります。以下のいずれかの条件を満たした場合、その訪問は「エンゲージがあった」と判断します。

  1. 滞在時間が10秒以上(この秒数は10~60秒の間で変更可能)
  2. 2個以上のイベントが発生した(例:複数ページ閲覧した)
  3. 閲覧したページやアクションがコンバージョン(成果)として登録していた

つまりエンゲージ数や率が高いほど、より関係を持てた回数や率が多いことを意味します。

下記の流入元レポートでも、2列目に「セッション」3列目に「エンゲージのあったセッション」、7行目に「エンゲージメント率(3列目÷2列目)」があるのがわかります。しかし、ここには直帰率はありません。

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直帰率とエンゲージメント率は逆の関係にあり、一般的に直帰率が高い=あまり良くない というところが、エンゲージメント率が高い=基本的には良い という考え方になります。新しい考え方に慣れていく必要がありますね。

3. 離脱率の定義が変更

ページを閲覧後に離脱した割合を見るための「離脱率」、こちらの定義もGAとGA4では変わりました。GAでは分母がページビュー数でしたが、GA4ではセッション数に変わっています。具体的な例で、ご説明します。 以下の3つのセッションがあった場合

  • ページA⇒ページB⇒ページC
  • ページA⇒ページC⇒ページB⇒ページA
  • ページB⇒ページA⇒ページC

GAの場合のページAの離脱率

  • ページAが最後だった回数=1回
  • ページAのページビュー数=4回

よって、ページAの離脱率=1÷4=25%

GA4の場合のページAの離脱率

  • ページAが最後だった回数=1回
  • ページAが存在するセッション数=3回

よって、ページAの離脱率=1÷3=33% 

こちらの変更に伴い、GA4での離脱率はGAより高くなります。サイトが悪くなったのではなく、GA4の仕様変更によるものだと覚えておきましょう。

4. セッションの定義が変わった

セッション(いわゆる訪問)の定義も変わりました。代表的なところとしては

  • 日をまたいでもセッションが切れなくなった(GAでは日をまたいだ訪問は2セッション扱いになっていた)
  • サイト外に出ても30分以内に戻ってくれば1セッションとしてカウントする(GAでは別サイトに移動して戻ってきた場合は別セッションとなっていた)

などがあげられます。特に2つ目の変更はメディアサイトにとっては大きいでしょう。ニュースアプリやニュースポータルサイトでの行き来などが多い場合、サイト全体のセッション数は減る傾向にインパクトを与えます。GAとGA4を比較した時に数値がずれる要因の1つでもあります。

結局、どうすればよいのか?

機能的なメリットもあれば、仕様的な違いもあり、レポート画面も使い方を覚えないといけないのがGA4です。しかし機械学習や自動分析などの機能も既に一部GA4には搭載されていますし、今後も更に便利になっていくことでしょう。

GAの計測停止のアナウンスもあり、計測の未来は間違いなくGA4になります。そのため現在オススメしたいのは並行計測です。GAとGA4はどちらもGoogle Tag Manager等で導入できます。ただ計測をするだけであれば1時間くらいで対応できるでしょう(カスタムでの実装を除く)。 そして今のうちにGAとGA4の数値や機能の差を見ておくと良いでしょう。データを今から貯めて置くことにより、来年GA4を本格的に利用する際に、昨年対比なども行いやすくなります。

本格的にこのタイミングで設定しようと考えている方や、既にそうされている企業もいることでしょう。それはとても良いことですし、このタイミングで改めて取得項目(=分析要件)を整理し、見たいデータや見やすいアクセス解析の環境を構築してみてはどうでしょうか? ぜひチャレンジしてみてください!

著者紹介

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小川 卓(おがわ・たく)

https://twitter.com/ryuka01

ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。 主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Googleアナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。

本記事は筆者と編集部の独自の取材に基づく内容です。スマートニュースの公式見解ではありません。