Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

実践ノウハウ公開!ニュースレターとポッドキャストで「個人メディア」

はじめまして、ayohataと言います。

普段は、KODANSHAtech合同会社という講談社の子会社でウェブメディアのディレクターとして働きながら、個人活動としてニュースレター「Publidia」とポッドキャスト「メディアのげんざい」を運営しています。

職歴でいうと、ブログサービスやSNSのフロントエンドまわりに関わり、編集プロダクションを経て、読書管理サービスのディレクションや広告営業や事業責任者、前職では無料でマンガが読めるサービスのPMなどを経て、KODANSHAtechに入社しました。
副業でメディアのコンサルティングやアナリストも行っています。

TwitterやFacebookやnoteなどのソーシャルメディアをつかった個人の情報発信が全盛の今、ニュースレターやポッドキャストをつかった個人メディア運営についてまだ情報が少ないのが現状です。
自分でも始めてみたいと思いつつ立ち止まっている方のために、様々なプラットフォームで個人メディアを運営してきた経験を振り返りながら、個人メディア運営時に考えるべきことやヒントをご紹介していきます。

ニュースレター「Publidia」とポッドキャスト「メディアのげんざい」とは

現在私がメインで運営しているメディアは、ニュースレターとポッドキャストです。ニュースレターはプラットフォーム「theLetter」を利用して、ポッドキャストはプラットフォーム「Anchor」を利用して発信しています。

ニュースレター「Publidia」は毎週、国内外の出版、メディアに関する動向や新技術、デザインに関することを紹介するニュースレターです。

ayohata.theletter.jp

2021年4月からスタートし、今では数百人の人に読んでいただいており、読者の約6割がネットメディアや新聞社、出版社の方々となっています。

ポッドキャスト「メディアのげんざい」は、メディアやエンタメコンテンツの現在地点、近未来について語り合うポッドキャストです。
2022年5月からスタートし、電子書籍配信やWEBTOON制作を行うデジタルコミックエージェンシーで働くコロクさんの2人で始めました。

open.spotify.com

個人メディアをはじめたきっかけ

当初は、強い目的があって個人メディアを始めたわけではありません。

日々、ニュースの共有がFacebookなどでされる中で、釣り見出しのニュースや偏ったリサーチの内容に振り回されている出版・メディア業界人の反応を見てきました。
自分は昔から、livedoor Readerという今はなき国産RSSリーダーをつかって国内外のブログやニュースメディアを読む習慣がありました。日々集めている情報でも、そうしたものも含まれていますが、そうした無駄な情報を排除して必要な人に伝える方法はないかと考えていました。
また、海外の出版・メディア業界の成功失敗事例など参考になりそうな情報も見ていたので、そんな情報も伝えることはできないかと思っていました。

そこでヒントになったのが、出版取次会社で長年MDなどに携わっていた出版業界人の古幡瑞穂さんが運営している「出版業界ニュースまとめ」です。毎朝、業界ニュースを古幡さんがピックアップし、見出しとURLを並べただけのシンプルなニュースレターですが、それが実に幅の広い媒体からキュレーションされており、網羅的でとても参考になります。業界のニュースを網羅的に紹介することに価値があるのだと気がつきました。

そんな気づきもあり、自分でも情報発信をやってみたいと思いました。ですが、自分には古幡さんほど網羅的に伝えることは難しいので、自分自身のキャリアの視点からニュースを選び、自分の視点を共有する形式が良いのではないかと考えました。
そうして始まったのが、ニュースレター「Publidia」です。

それに対して、ポッドキャスト「メディアのげんざい」は、友人のコロクさんとオンライン飲み会の会話からはじまったポッドキャストです。こちらはあまり長く構想していたわけではなく、とりあえず収録してみようとなりました。
コロクさんも私と同じく長くメディアやエンタメの現場で働く業界人。見切り発車とはいえ、ふたりのバックグラウンドと堅実な性格から「メディアやエンタメ業界について率直に語っていく」というコンセプトはすぐ固まり、「メディアのげんざい」というタイトルになりました。
ほぼ毎週水曜日に配信、1エピソードが15〜30分程度の長さです。

ニュースレターはどのように配信しているのか

ニュースレター「Publidia」は、毎週土日のどちらかに配信しています。

内容の多くは、国内外のメディア、出版に関連するニュースとなっています。情報元は以下となっています。

  • 国内外のブログ、ニュースメディア(閲覧はFeedlyを利用)
  • Googleアラートで業界関連のキーワードをいくつか登録
  • 国内外のメディア関連のニュースレター
  • Twitter

毎朝15分程度、これらを見た上で、気になったニュースをツイートしておきます。
そのツイートを取得するプログラムをPythonで作っており、毎週土日にツイートを取得、選別してニュースレターの原稿を作成します。

そして、配信にはtheLetterというニュースレター配信サービスをつかっています。theLetterは2021年に始まったプラットフォームで、シンプルなUIでニュースレターの編集が可能であり、課金も可能という特徴があります。
海外のニュースレタープラットフォームも人気がありますが、日本語入力に難があることや、theLetterには書き手のコミュニティもあるため安心して執筆活動ができると感じ、利用しています。

theletter.jp

ポッドキャストはどのように配信しているのか

ポッドキャスト「メディアのげんざい」は二人が同じ場所に集まるのではなく、基本的にオンラインで収録を行っています。

収録時はGoogle Meetを使いますが、録音自体はそれぞれ本人のマシンのローカルで行い、二人の音声を後から合成します。これは、どうしても入ってしまう咳払いやノイズなどを除去や、音のバランス調整のためです。一応、バックアップとしてGoogle Meetの録画も行っています。
Google Meetで録音した音声では合成されているため、編集が難しい場面が出ます。

マイクはYETIのマイクを使っています。ポッドキャスターに人気のマイクらしく、満足できる音質で録音できるので気に入っています。
このマイクは、「メディアヌップ」というポッドキャストの#005 良いマイクは健康に良い、良いマイクは地球を救うで紹介されていたことで知りました。

録音した音源の合成や編集はMacに無料でインストールされているGarageBandというソフトを使っています。周りのポッドキャスターは、Adobe Auditionを使っている人も多いですが、個人的にはGarageBandのほうがユーザインターフェイスが好きです。
また、ノイズ除去などはGarageBandのデフォルト機能では不十分と感じ、CrumplePop AudioDenoise AIという有償のプラグインを使っています。 このプラグインで、ある程度のノイズは消せます。

また、自分でもポッドキャストを配信するようになって、他のポッドキャストを聞いて感じるのは、音量や音圧に課題がある番組が多いということです。
自分も初期はその課題があり、現在はGarageBandをつかってゲインを上げて調整を行っています。

そして、編集が終わった音声ファイルはAnchorというサービスにアップロードしています。
オンラインでBGMを付け、エピソードのタイトルや概要を記載し、配信設定をすれば完了です。
配信時間になれば、最初に連携設定は必要ですが、SpotifyやApple Podcast、Google Podcastなどに自動的に配信されます。

個人メディアをやる上でのおすすめツール

個人メディアを作る上で、おすすめしたいツールについてレビューをしたいと思います。

theLetter

theLetterは2021年10月から正式にスタートした日本初の個人ブランド向けニュースター配信サービスです。
ニュースレターを作成、配信、データ分析、ユーザへの課金も行えます。

theLetterの管理画面※配信数などの数字はマスクしています

データ分析では、以下のデータが見ることができます。

  • 開封率
  • クリックされたリンクの数
  • 登録者の加入日、退会日
  • Web上でのニュースレターが閲覧された際のPV

このデータを活用し、ニュースレターの内容改善に役立てることもできます。
また、海外のSubstackやRevueなどでも存在する機能ですが、登録者のメールアドレスを保持することができます。昔からあるニュースレター、メルマガ配信サービスだと、配信者の退会抑止のためにプラットフォーム側のみメールアドレスを保持するパターンもありましたが、最近のニュースレター配信サービスではそのようなことは少ないようで、安心できます。

まだ、はじまって2年ほどなのでまだまだ進化の余地があるサービスですが、ロイヤルユーザなど分類ができるようになると良いなと思っています。

Anchor

Podcast配信サービスのAnchorは無料で使えるポッドキャスト配信サービスとなっています。
2019年にSpotifyに買収されたことを契機に、Spotifyとも密に連携するサービスとなっていますが、このAnchorに音源を登録すると事前設定すればApple、GoogleやAmazonの主要なポッドキャストサービスへ配信が可能です。

また、Anchorで一番便利だと思うのは音声編集機能です。
音声の波形を見ながら、編集が行えます。また、あらかじめ用意されたBGMをつけたり、効果音を挟み込むこともできます。

また、音源をアップロードして番組やエピソードの内容を管理画面で入力して、公開すればすぐに配信が可能です。
ウェブ版、スマートフォンアプリ版では録音機能もあるため、Anchorのみで録音、編集して公開することもできます。

Anchorの管理画面では、再生回数や各種ポッドキャストプラットフォームで再生された回数や年代性別などのデータも見ることができます。

Anchorの管理画面

海外サービスですが、ユーザインターフェイスは日本語化されており、また無料で使えるのでポッドキャストの配信はAnchorがとても便利だと思います。

運営する上でのモチベーションや今後のこと

自分の視点を共有できれば、という思いから個人メディアを運営しています。
現状、どこまでそれができているかは、悩ましいところではあります。

指標として、ニュースレターは購読数と開封率、ポッドキャストは再生数と再生完了率などがあります。
購読数や再生数は順調に伸びているので、一定の支持はいただいてるようですが、その数字が上がる=当初の目的達成ができている、という状態では必ずしもないため、日々悩みながら発信は続けています。

ただ、たまにSNSや対面で自分のメディアの感想をいただくこともあり、それが発信のモチベーションになっています。

また、最後にみなさんが気になるマネタイズについて。

ニュースレターは、既に課金でマネタイズする方法もあり、私が使っているtheLetterでは年収換算で1,000万円を超えるようなユーザもいるようです。
また、ポッドキャストについては有料サブスク機能を提供しているプラットフォームがちらほら出てきていますが、まだ日本国内ではそこまで伸びてる状況ではありません。
また、音声広告も提供している会社も増えてきていますが、まだこれからという状況です。

そうした状況の中で、私の個人メディアについては、課金や広告でのマネタイズは考えていません。
広告については規模感的に難しさはあると感じており、サブスクについては悩ましいのですが、自分の感覚で読者数の10%未満の人がサブスクに入ってくれると感じています。そう考えた時に、その人数だけに向けたコンテンツを作ることが正しいかどうか考えると、無料で多くの人に読んでもらう方向が自分の目的にあっていると感じています。

ただし、将来的には有料イベントやセミナーなどの開催などはチャレンジ可能だと考えていますが、個人メディアというものは一人ないしは少人数でやっているため、マンパワーについて解決する必要があります。

個人メディアの良さは、個人の考えを世間に直接伝えることもでき、読書から価値を認められれば課金などマネタイズを行うことも可能だと考えています。 既にブログやSNSで発信している人も多いとは思います。
個人メディアで読者との繋がりを増やし、エンゲージメントを高めるなど、読者の可視化をしながら発信していくことはとても楽しいため、みなさんも発信したい内容があればチャレンジしてみてはいかがでしょう



著者紹介

ayohata

ayohata/大西隆幸(おおにしたかゆき)

個人メディア「Publida」「メディアのげんざい」を運営。 読書管理サービスの責任者、電子書籍取次子会社のマンガサービスのPMを経て、2020年よりKODANSHAtech合同会社のディレクター、副業で出版社のメディアコンサルティングを行う。

ayohata.com