Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

『TBS NEWS DIG Powered by JNN』が4カ月目で1億PVを達成した理由――「SmartNews Awards 2022」授賞式を振り返る

スマートニュースは2022年12月13日、「SmartNews Awards 2022」の受賞メディアを発表しました。「SmartNews Awards 2022」は、良質なコンテンツと、その担い手に贈るアワードで、2015年に創設したものです。8回目の開催となる今年は、「大賞」「読者投票賞」「ベストパートナー賞」の3部門で計18媒体が受賞。報道、スポーツ、ローカル、海外エンタメなど、多岐に渡るメディアが顔を揃えました。

12月19日に開催された「SmartNews Awards 2022 授賞式」では、「大賞」を受賞した『TBS NEWS DIG Powered by JNN』(以下、TBS NEWS DIG)の運営メンバー2名による「テレビ局がWebニュースメディアの設計&運営をしてみた結果」をテーマにした講演が行われました。TBSNEWS DIGは、2022年4月にリニューアルしたばかりのWebメディアです。
そのメディアがどうやって開始4カ月目で1億PVを達成したのか。その秘密は、在京のテレビ局の発想を大きく広げ、系列局のネットワークを活かしたり、記事をWEBならではの最適なタイミングで届けたりすることにありました。授賞式の様子と合わせて、そのノウハウをお届けします。(スマートニュースPRチーム)

 

JNNネットワークを総動員。日本全国のニュースをテレビ以外でも( TBS NEWS DIG )

「SmartNews Awards 2022」大賞を受賞したTBS NEWS DIGは、今年の4月に大幅リニューアルした報道メディアです。国内外問わず、さまざまな大きな事件や社会問題が起こる中、TBSをキー局としたネットワークであるJNN28局の、総合力によるフットワーク鮮やかな報道が大賞受賞に寄与。授賞式では、TBS 報道局 デジタル編集部の河村健介氏が登壇し、立ち上げてから10カ月弱での受賞について率直な想いを語りました。



このサイトは、TBSのみでやっているサイトではなく、JNNネットワーク全体でやっている媒体です。TBSはキー局といわれますが、裏を返せば、東京、関東エリアのローカル局でもあります。日本全国のニュースをいろいろな方々にテレビ以外の方法で届けるために、ネットワークの力は不可欠です。この賞は、TBSだけでなくJNN全体でいただいた賞だと思っております。

 

テレビ局が改めてWebニュースメディアの設計&運営をして分かった「強み」と「足りなかったこと」( TBS NEWS DIG 講演)

授賞式の後半パートでは、TBS NEWS DIG を運営する報道局 デジタル編集部による、「テレビ局発のWebメディア運営における強みと足りなかったこと」に関する講演が行われました。登壇は、TBS NEWS DIGの編集長業務にあたる、デジタル編集部デジタル統括プロデューサーの河村健介氏と TBS NEWS DIG システム開発チーフ兼NEWS DIG編集長をつとめる南部諒生氏

河村健介氏

南部諒生氏



TBS NEWS(旧サイト)に何が欠けていたのか

TBS NEWS DIG が取り組んだ課題は大きく2つありました。

  • 全国28局のTBS系列JNNのこれまで培った取材力を最大限活用するにはどうすればいいか
  • 地上波ではなくWebを意識した記事作りで何を大切にしたのか

南部氏によると、TBS NEWS DIG の前身だった『TBS NEWS』にはある課題があったと言います。在京のTBSが運営するメディアであったこともあり、関東のニュースがメインになりがちで、全国各地のニュースをバランスよく届けられていなかったそうです。さらに、地上波の放送に準ずる形での記事掲載であったため、オンエア後の配信になってしまったり、テレビで放送した内容をそのまま文字起こしするだけだったり(=Webに最適化できていない)、「テレビのスケジュール」に合わせたコンテンツ配信になっていたそうです。

こうした課題を解決するために、TBS NEWS DIGの立ち上げにあたって注目したのは、全国に張り巡らされるJNN28局のネットワーク力です。もう一つ力を入れたのが、地上波の枠や尺にとらわれずにWebに最適なタイミング・内容で記事を掲載することです。

 

準備期間で大切なのは、立ち上げメンバーと媒体コンセプト

TBS NEWS DIGの立ち上げメンバーには、報道経験者のみならず、営業や報道カメラマンなどを経験した幅広いメンバーが集まったそう。その誰もがWebメディア立ち上げ経験などがなかったことがかえってよかったのでは、と、サイトのシステム開発チーフで編集長を務める南部氏は振り返ります。

このサイトは、“ やろう ” と決めて、メンバーが招集されて、約半年でリニューアルオープンしているんです。急ピッチだったのですが、メンバー全員が納得のいく形ではじめられた。ニュースサイトの運営は特有のノウハウが必要だと感じていますが、みんなが未経験者で、自由にオープンな環境で議論を交わせたからというのも大きい気がしています。

そうとはいっても、約半年の準備期間でどのようにして社内交渉やJNNネットワーク各局との調整・連携を進めることができたのでしょうか。南部氏があげたのは、「媒体コンセプト」をしっかり固めること。とてもシンプルな解決策でした。

 

TBS NEWS DIG の媒体コンセプト

TBS NEWS DIG のコンセプトは「掘り起こす、探求する、発見する。」。コンセプトの構築に一番時間をかけた、と南部氏。ここにじっくりと時間を費やしたことで、社内外の関係者のほとんどが媒体コンセプトに共感し、積極的に協力をしてくれるようになりました。

効果はそれだけではありません。サイト構築の方向性に迷ったときに立ち返るものとしても作用しました。またTBS/JNNでは報道特集に代表されるように調査報道に力を入れており、そうした放送との方向性とも合致したと言います。

 

立ち上げ4カ月目で月間1億PVを突破。「U-30」など独自企画が人気

結果として、TBS NEWS DIG は、2022年4月中旬の立ち上げからわずか4カ月目で、月間1億PVを達成します。およそ半年後の10月には、月間1億6,000万PVを達成するサイトに。ソフトニュースからハードニュースまで幅広いコンテンツを展開する中で、地上波放送を切り出すだけでなく、Webオリジナルのコンテンツにも注力しているそうです。


身近な疑問から事件・裁判を、地上波コンテンツの焼き直しではなくWeb独自の特集企画として展開したり、若手記者の等身大企画「DIG U-30」では、CBCテレビ(本社:愛知県)所属の25歳の記者がチック症候群のUber配達員の素顔に迫るなど(記事は以下)、独自の着眼点でするどく切り込む記事が読者から好評を集めているそうです。

●若手記者の等身大企画「DIG U-30」の記事一部:
15秒に1回 勝手に声が出る“悪魔の病気”と闘う27歳ウーバー配達員 深夜の“メッセージ”が気になって25歳記者が話を聞いた トゥレット症・チック症とは(CBCテレビ)

 

「テレビ」では映像、つまり動画で視聴者に情報を届けます。ただ、Web上でユーザーにリーチしていくには動画だけではなく、テキストにも注力しなければせっかく取材した情報が届かないのではないかと考えた――と講演で河村氏は語ります。

立ち上げから9カ月。今では、NEWSDIGに掲載した各局のコンテンツがWebメディアなどでも話題となり、TBSの報道番組が別途取材・放送するなど、「地上波への逆輸入」的な動きも活発になってきています。
例えば、あいテレビ(本社:愛媛県)所属で、発声障害を患う28歳のアナウンサーのリアルボイスを綴る記事(記事は以下)は、ネット上で反響を呼び、その後、TBSの番組で全国放送され、さらに注目を集めました。『TBS NEWS DIG Powered by JNN』の存在がなければ、ローカルのみの発信で、ここまで多くの方に知ってもらえなかったのではないかと河村氏、南部氏はじめ、TBS NEWS DIGの編集部では考えています。

●若手記者の等身大企画「DIG U-30」から地上波へ波及した記事:
28歳アナウンサー、「発声障がい」と闘っています。絶望の末に伝えたかった“声の病気”のこと(itv)

「作る」「届ける」「見てもらう」基礎3原則こそ最も重要

河村氏は、「これまで足りなかった点」にも言及しました。

  • コンテンツをしっかりと「作る」(取材・執筆・編集)
  • コンテンツを「正しいタイミングで、正しいところに届ける」(どこで見られそうか、どのタイミングで見られそうか)
  • コンテンツを「クリック/タップして見てもらう」(魅力的なタイトル、サムネイルを揃え、コンテンツであふれるスマホの中で“手にとって、フタをあけてもらう”)

「取材してコンテンツを作る」部分はこれまでの報道業務のなかで培われてきたノウハウがいかせると考えている一方、「コンテンツを適切な形で届けて、フタをあけてみてもらう」という部分への意識が自分には足りていなかったそうです。開設2年目となる2023年には、TBS NEWS DIG がどう進化するのか。注目が集まる中で閉会となりました。

 

ほかにも、授賞式では、TBS NEWS DIG とともに、読者投票賞の『ロケットニュース24』に対し、スマートニュース株式会社取締役 COOの浜本階生からトロフィー記念の楯を授与いたしました。

 

TBS NEWS DIG 授与シーン

『ロケットニュース24』授与シーン

“ばかばかしいを真剣に” もう一度記事の時代を取り戻したい(ロケットニュース24)

読者投票賞は、スマートニュースのユーザーが「応援したいメディア」「みんなに知ってほしいメディア」に投票することで受賞者が決まります。今年は、「分かりやすい馬鹿馬鹿しさ(褒めてます!)を本気で与えてくれて本気で癒してくれる」など『ロケットニュース24』が読者から圧倒的支持を集め、受賞しました。ロケットニュース24の読者投票賞の受賞は3回目です。

授賞式には、「迷惑メール評論家」や「100均評論家」など、多数の肩書を持つ編集長のGO羽鳥氏が登壇。動画全盛期に、再び記事の時代を取り戻すべく、日々切磋琢磨する姿を語りました。

GO羽鳥氏

「ばかばかしいことを真剣に」「読者ファースト」を意識する中での「読者投票賞」の受賞。これ以上嬉しいことはありません。設立してから約13年の月日が経過していますが、日々悩みながら記事を制作しています。最近は動画を見るユーザーが非常に多いので、いかにして動画を観る若者たちを自分たちの記事で振り向かせるのか、試行錯誤していますが、なかなか答えは見つかりません。何とかもう一度、記事の時代を取り戻すべく、記事といってもテキストや写真だけでなく、GIFや音楽を活用するなど工夫しています。

『ロケットニュース24』授賞の様子は、ロケットニュース24でも “ ロケニュー色 ” 満載で記事化されています。

rocketnews24.com


スマートニュース株式会社は、2022年6月に会社設立10周年、同年12月にニュースアプリ「SmartNews」ローンチ10周年を迎えました。これもひとえにユーザー、広告主、そしてメディア関係者の皆様の多大なるサポートのおかげです。本授賞式と同日開催の「メディアパートナーカンファレンス」では、スマートニュース社COOの浜本より改めて、メディアの皆様に感謝の気持ちを述べさせていただきました。2023年も「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」をミッションに、サービスの提供と成長を続けていきます。引き続き宜しくお願いします。

 

●SmartNews Awards 2021 大賞メディアインタビュー

www.mediatechnology.jp