Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

タイトル研究:「重要なキーワードは前に持ってくる」は、正解か?

こんにちは、スマートニュースの有野です。 普段、私たちのニュースアプリ「SmartNews」を通じて各メディアが配信する記事が、ユーザーにどのように読まれているのかを分析する業務に携わっています。

Webの記事において、非常に重要な「タイトル(見出し)」。媒体社のみなさんもそれぞれ、たくさんのタイトルに関する「公式」や「仮説」をお持ちではないでしょうか。

たとえば、よく言われていることのひとつに、「Web記事のタイトルでは、重要なキーワードを前に持ってくるべし」というものがあります。

体感的には妥当に思えますが、この「公式」はどれくらいデータで実証することができるのでしょうか。SmartNewsに配信いただいた記事のうち、約3万件のタイトルデータをもとに分析しました。

本稿では、タイトルにおける「重要なキーワード」を「タイトルの主語」とし、その開始位置に注目しました。

たとえば、

カメラの性能が大幅アップしたiPhone徹底レビュー

というタイトルの記事は、「iPhone」がメインだと考えられますから、タイトルの主語は「iPhone」、その開始位置は15文字目となります。

同様に、

東京五輪、海外メディアはGPSで行動管理へ

は「東京五輪」が主語で、開始位置は1文字目。

エンゼルス大谷翔平、1安打2四球の活躍もチームは3連敗

は「大谷翔平」と見て、開始位置は6文字目となります。

今回の調査は、以下の手順で行いました。

  1. :SmartNewsで配信いただいている記事の中から、エンタメ、スポーツ、テクノロジー、暮らしジャンルにおいて、一定以上のPVがある記事を1万本以上ランダムに選定。*
  2. :形態素解析**を行い、出てきた名詞のうち、サービス名、人名、企業名、アイテム名などの位置を取得(主語の開始位置を取得)
  3. :記事のCTRを調査

* 一定以上のPVとしているのは、PVが少なくクリックが多い場合、CTRが異常に高く出るためです

** 形態素解析とは文を形態素という最小単位に分割し、それぞれの品詞(名詞や動詞など)を特定する処理のこと

調査の結果をまとめたグラフが以下となります。横軸が主語の開始位置、縦軸がCTRを表しています。

このような「箱ひげ図」を見慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、CTRの幅(ばらつき)を示しており、箱の中の横線(第2四分位)が中央値を表しています。簡単にみると、上に伸びていればいるほどCTRが高いと見なしていただいてOKです。

補足すると、箱ひげ図外の点は外れ値として対象から外しています。また、20文字以降は、「主語の位置」がある件数が非常に少なく、ぶれが大きく出てしまう(1記事あたりのCTRの高低が大きな影響となってしまう)ため、本項ではあまり言及しません。

前半部分をみてみましょう。多くの方が予想していたと思いますが、前半部分に大きな波ができています。

中央値でみると、2文字目、4文字目、6文字目が高くでています。ばらつきの幅でみると5文字目にあらわれています。

以上のことから、前半部分に主語が含まれているタイトルは、そうでないものと比べてCTRが高い傾向がある――つまり、「Web記事のタイトルでは、重要なキーワードを前に持ってくるべし」はデータからも妥当であると言えそうです。

……というまとめですと、「なーんだ、やっぱりそうなんじゃん」という声が聞こえてきそうですが(笑)、少し面白いデータの紹介もさせてください。

15〜16文字目で、またCTRが上がっていっている傾向があります。

これは、データだけでみると理由が理解できなかったのですが、SmartNewsのレイアウトで見てみると、ちょうどタイトルの折り返し位置にあたるということがわかりました。折り返されていることから、実質冒頭に置いたような効果が出ている……ということでしょうか。

赤囲みが15文字目の位置

これはあくまでSmartNewsにおける傾向ではありますが、みなさんの記事タイトルは、本体サイト、TwitterなどのSNSや、SmartNewsのような外部配信先それぞれで、折り返されて表示されていることがあるはずです。こうした「折り返しの位置」も読者の行動に影響を与えることは参考にしていただければと思います。

今回の調査のまとめは、

  • タイトルの主語にあたるキーワードの位置は、ユーザーの目に早く入る位置がよい。おおむね前半部分(10文字以内)
  • 記事のタイトルが折り返し表示された場合、折り返し冒頭の位置は早く目に入るため、前半部分においたときと同様の効果がある可能性がある
  • ユーザーはタイトルを「読む」ことより「見る」ことを楽しんでいるのではないか

でした。多くのメディアのみなさんの実感とも合致するのではないでしょうか。

ただ、言うまでもないことですが、記事タイトルはあくまでも人間が読むものです。「絶対に◯文字目までに主語が開始するべき」というような“公式”はなく、読者にとって違和感なく、読みやすく、期待を裏切らないタイトル構成にすることが、読者とのエンゲージメントにおいて重要です。

スマートニュースのオウンドブログ「Media×Tech」では、これまでもさまざまなタイトル研究の記事を公開しています。たとえば「スマホを意識した記事タイトルとは?ーー読者の期待をコントロールする」では、いわゆる釣りタイトルは離脱率を上げてしまう可能性があることを指摘しています。あわせて参考にしていただけますと幸いです。

著者紹介

有野 寛一(ありの・ひろかず)

有野 寛一

スマートニュース株式会社 Data Analyst of Media & Content

前職ではSmartNewsAwardsを受賞した週刊アスキーのWebプロデューサー。その知見を活かした媒体社様とのコミュニケーションを担当する。大手ポータル、SNSでの経験から情報発信と受信に課題を持ち現職へ。インターネットで流通するニュースが好き。

この記事も書きました。

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