Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

コロナ禍のホットケーキミックス品薄はレシピ記事の閲覧増に前兆あり? 食の記事の閲覧傾向を分析する

 

年末恒例のSmartNews内での閲覧傾向の分析。本稿では「コロナと食」について記事を取り上げます。

2020年は新型コロナウイルスの蔓延で私たちの生活が一変しました。日々の状況変化に伴い、新型コロナウイルスに関するSmartNewsユーザーの興味関心や情報ニーズも日々移ろっていきます。そんな中、「食」の記事の閲覧傾向から、人々の食生活の変化を垣間見ることができました。

 

本稿では、SmartNewsで人気の「グルメ」「レシピ」両チャンネル(カテゴリ)内の記事(以下、食関連の記事)を、「外食」「レシピ」「テイクアウト」「宅配」「お取り寄せ」の5テーマに分類し、閲覧傾向を調査分析しました。

 

本稿は、良質なコンテンツとその担い手に贈るアワード『SmartNews Awards 2020』を記念して執筆しました。

  • 調査期間:2020年1月1日〜11月30日
  • 調査対象:食関連のすべての記事(SmartNews「グルメ」「レシピ」両チャンネルで掲載された約24万記事)

外食、テイクアウト、宅配……コロナ状況下での食の変化

食関連の記事の総閲覧数を分母に、分類別の割合を週単位で示しました(図1参照)。1〜3月までは「外食」が7割、「レシピ」が2割と例年通りの傾向でしたが、4月の緊急事態宣言を受けて外出自粛期間に入ると、「レシピ」「持ち帰り」の閲覧割合が上昇しました。また、同時期から「お取り寄せ」も目立つようになりました。

「外食」は、緊急事態宣言が解除された5月末から徐々に回復し、10月にピークを迎えましたが、11月頃からの第3波を受けて再び減少していきます。なお、3月2日からの学校の一斉休校は、食関連の記事の閲覧動向には大きなインパクトはありませんでした。 

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ホットケーキミックスの品薄はレシピへの注目が原因か?

「レシピ」記事の閲覧数は、3月下旬から6月にかけて増加傾向になりました。この時期は、休校や、リモートワーク推奨、緊急事態宣言による外出自粛などを受けて、自宅で過ごす時間が増えたことが要因だと考えられます。

「レシピ」記事のなかでも「チーズ」を使ったレシピは年間を通じて閲覧数がほぼ一定であることが例年の特徴ですが、今年は4月13日週(4月13日〜4月19日)から増加し始めました(図2参照)。外食を控えた一方で、おうち時間でチーズを使った料理を作ろうと思った人が多かったのかもしれませんね。その後、緊急事態宣言が解除された5月末より緩やかに減少し、その後、大きな変化はみられません。

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参考データとして、昨年と今年の「チーズ」の動向をGoogle Trendsで調べました(図3参照)。2019年は2月にピークがあり、その後大きく減少することはなく緩やかな推移です。2020年は先の閲覧数と同様に4~5月にピークを迎えています。

 

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 同様に「ホットケーキミックス」を使ったレシピ記事への閲覧数です(図4参照)。ホットケーキミックスの品薄のニュースは記憶に新しく、4月下旬ごろから見かけるようになりました。

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SmartNewsでの「ホットケーキミックス」を使ったレシピ記事への閲覧をみると、4月13日週にピークを迎え、減少します。他の週に多少は波があるものの、この4月の週だけはより目立って閲覧が多かったことがわかります。

こちらも参考に昨年と今年の「ホットケーキミックス」の動向をGoogle Trendsで調べました。2019年は2月のバレンタインデーの時期がピークとなり、その後は大きな動きはみられません。2020年は2月に上昇が見られたものの、4月の時期を超えるほどの上昇がありませんでした。

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自粛期間中に自宅で過ごす時間が増え、お菓子作りの需要が増したため閲覧数が増加したと考えられます。詳細に閲覧動向の時系列を分析すると、品切れが騒がれる前から閲覧数が増加しており、この需要の高まりがホットケーキミックスの品薄につながっていったのではないでしょうか。

コロナ第3波でも外食が多い?

 緊急事態宣言解除後は、東京を始めとした一部地域での営業時間短縮要請は「外食」記事の閲覧傾向に大きく影響していません。秋に入ってからは政府が推進する「Go Toキャンペーン」関連の記事閲覧数が増加し、「外食」への関心を押し上げる格好になりました。

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生産者の応援からお取り寄せへ

3月から休校が始まり、新学期も始まらないまま緊急事態宣言が発令され、全国の生産者にダメージが発生しました。

「お取り寄せ」に分類される記事の中から「応援」を含む記事の閲覧数をみてみると、4月中旬から生産者を応援する動きが始まりました。

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また自粛期間に入ったままゴールデンウィークを迎え、有名銘菓のお取り寄せをきっかけに全国規模での広がりが見えました。

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 ゴールデンウィークの食の「巣ごもり需要」とみると、全国各地のお取り寄せ、生産者の応援購入も貢献したと思われます。

コロナの影響で伸びた宅配の傾向

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コロナ状況下で各社の宅配サービスが拡充し、代名詞的な「ウーバーイーツ」が2020年の流行語大賞にノミネートされたことが象徴しているように、宅配サービスについて期待と需要が増えた1年になったかと思います。

「宅配」「デリバリー」を含む記事の閲覧数のグラフ(図9参照)をみると、飲食店店内の飲食中止や、営業時間の短縮が始まった4月中旬ごろより閲覧数が増加しています。

ただし、先の「食の分類ごとの閲覧数の割合」グラフ(図1)では宅配の閲覧数の割合は小さい結果となりました。閲覧された記事の特徴をみると、大手チェーン店が宅配に対応した、とファクトベースでの記事が多くありました。

 閲覧割合が少なかった要因として、近くに店舗がないことや、宅配サービスの対応の地域差など、「自分ごと」にならず閲覧に至らなかったユーザーが多かったのではないかと推測します。

一方で、宅配サービスは食のニュースとしてだけではなく、宅配での危険運転や、サクセスストーリーなど、さまざまな角度から報道されました。

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このグラフは「食」のカテゴリを含まない宅配関連のキーワードを含む記事の閲覧傾向です。ゴールデンウィークだけではなく、連日ニュースは途切れません。

業種別でみる閲覧傾向

 食に関する記事の閲覧傾向として、SmartNewsでも閲覧数が多い食に関する業種(業態)での閲覧傾向です。

コンビニ記事はコロナ禍でも例年通り

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大手コンビニエンスストア(セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート)が含まれる記事の閲覧推移です。

閲覧数の推移でみると、1月から緩やかに上昇し、9月以降は減少が見られます。緊急事態宣言下である、4~5月で見てみると多少の減少があるものの5月中より閲覧数が増えた傾向が見られます。

閲覧された記事ではコロナ状況下を反映した記事ではなく、新商品の紹介記事やキャンペーン記事が主となっています。

(例)

 このようなコロナの影響を受けない記事が読まれた背景として、コンビニ各社が、レジ前のビニールカーテンなど、いち早く感染症対策を取り入れ私たちが安心して利用できる店舗運営が行われたからではないかと考えます。結果として、閲覧動向としては例年通り新商品の紹介記事やキャンペーン記事が中心でした。

コストコやカルディは4月までと5月以降で記事内容が一変

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SmartNews上で人気の高い、「業務スーパー」「コストコ」「カルディ」に関連する記事を調査しました。年初より緩やかに増加傾向があったのですが、3月から4月下旬に向け減少傾向、5月から若干増加が続き、緩やかに落ち着いた傾向が見えます。6月までは「業務スーパー」が、6月以降は「コストコ」の閲覧数が増加し、「カルディ」は安定して閲覧されていることがわかります。

記事内容の傾向は、4月中の緊急事態宣言が発令されたころまで、節約や常備など、先が見えない自粛期間へ備える記事の閲覧が目立ちました。

5月より自粛期間の終わりが見えた頃から、食を楽しむ傾向の記事が読まれました。

スタバやマックはテイクアウトやモバイルオーダーに注目

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「スターバックスコーヒー」「マクドナルド」「コメダ珈琲店」などの外食産業関連では、新商品・サービスの発表の有無でニュースの閲覧数が大きく左右されますが、コロナ状況下での営業時間の短縮や、店内客席利用中止の対応があり、3~5月の閲覧数に大きな変動が見えます(図13参照)。その中で、持ち帰り需要の高まりを受け、、各社のテイクアウト対応を積極的に伝える記事が閲覧数を集めました。

また、オーダーの「密」を避ける、アプリからの事前注文の記事もよく閲覧されました。

年末から年始は?

11月中旬より全国各地で日々の感染者が増え、第3波と呼ばれる感染状況となりました。Go To キャンペーンも一部地域で一時停止が決まり、「お出かけ」や「外食」の閲覧数も減少しています。一方、年末年始のイベントである、クリスマスとお正月は8月から情報や予約が始まり、閲覧数の増加傾向が現れました。

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以上、2020年、コロナ状況下での食の記事の閲覧傾向をみてきました。

 ちなみに、私自身も完全な在宅ワークとなり、食事は自宅で済ませることが圧倒的に増えました。ちゃんと自炊すればよいのですが、ひとりだとつい手軽に済ませることが多く、カロリー高めの食事が増えてしまい、体重もしっかり増えてしまいました。来年はコロナが落ち着いたら、外食を友人と適度に楽しみたいと思います。

 

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著者紹介

有野 寛一(ありの・ひろかず)

有野 寛一

 

スマートニュース株式会社 メディア事業開発

前職ではSmartNewsAwardsを受賞した週刊アスキーのWebプロデューサー。その知見を活かした媒体社様とのコミュニケーションを担当する。大手ポータル、SNSでの経験から情報発信と受信に課題を持ち現職へ。インターネットで流通するニュースが好き。

本記事の分析は、SmartNewsアプリでの掲出アルゴリズムとは一切関係ありません。