2020年9月。憲政史上最長となっていた安倍政権はついに退陣しました。さて、約7年8カ月続いた同政権のニュースは、いったいどれだけ国民の注目を集めたのでしょうか。
年末恒例のSmartNews内での閲覧傾向の分析。本稿では、直近3年間(2016年1月1日〜2020年9月16日)のSmartNewsでの読者が、安倍政権に関するニュースを読んだ数(PV)を「興味を持った数」と仮定し、政権の施策と興味の変化を追ってみました。また、参考指標として、同期間の日経平均株価を併記しました。
本稿は、良質なコンテンツとその担い手に贈るアワード『SmartNews Awards 2020』を記念して執筆しました。
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- 2016年5~6月 消費増税を延期
- 2017年8月 ゆれ動く閣僚人事
- 2017年10月 衆院選で与党が勝利
- 2018年4月 森友・加計問題、桜を見る会
- 2019年8月 緊張高まる日韓関係
- 2020年2月 全小中高に臨時休校要請
- 2020年4月 緊急事態宣言
- 2020年5月 賭けマージャンやTwitterデモ
- 2020年7月 「Go To トラベル」
- まとめ
2016年5~6月 消費増税を延期
2016年に一番目立ったのは、6月に消費増税の延期を発表したことです。読者の興味度は5月末から上昇した一方で、日経平均株価は1年で最も下がった時期となりました。このとき、読者が興味を持っていた記事はこのような記事になります。
- 安倍首相:「消費増税再延期」表明…「参院選で信を問う」(毎日新聞)
- 【党首討論・発言詳報】安倍総裁、岡田代表ら9党首、「アベノミクス」「経済」で参院選前に激しい舌戦 (ハフポスト)
- 安倍首相「気をつけよう、甘い言葉と民進党」 (朝日新聞デジタル)
2017年8月 ゆれ動く閣僚人事
2017年の中で、安倍政権に対する読者の興味が最も強かった時期は、7月下旬から8月上旬です。消費増税延期を受けて前年6月ごろにみられた動きと同様に、読者の興味は多少上がりましたが、株価は下がりました。このとき、読者の興味を集めていたのは次のような記事になります。
- 安倍首相:田原総一朗氏の「政治生命かけた冒険を」に関心 (毎日新聞)
- 稲田氏辞任会見でも失言 今度は安倍首相の虚偽答弁に発展 (日刊ゲンダイ)
- “裏切り者”石破氏の党内評価急落…「ポスト安倍」争い、岸田氏が逆転リード (夕刊フジ)
2017年10月 衆院選で与党が勝利
2017年の10月、自民党が衆院選挙で勝利した際は、読者の興味も株価も同時に上がりました。過去3年をさかのぼった中で、経済指標が大きく動いた時期の一つでもあるのですが、注目を集めた記事はこちらでした。
- 毎日新聞調査:「安倍首相続投望まず」47% (毎日新聞)
- 「希望の党」失速で高笑いも安倍首相は退陣必至 (AERA dot.)
- 安倍首相のおひざ元・衆院山口4区で起きたこと…これが選挙戦なのか 民主主義が揺らいでいる (産経ニュース)
2018年4月 森友・加計問題、桜を見る会
1年を通して読者の興味も日経平均株価も、平均して前年より高い状態が続いた2018年。特に、読者からの興味が長く続いていたのは4月でした。森友・加計問題、桜を見る会などの記事がよく読まれました。
- 国会前デモ:安倍政権退陣迫る 森友・加計問題で3万人 (毎日新聞)
- 安倍政権「また新文書で右往左往」の異常事態 (東洋経済オンライン)
- 安倍首相が不祥事を謝罪「桜を見る会」で (日テレNEWS24)
2019年8月 緊張高まる日韓関係
2019年に入り、大きく読者の興味が動いたのが夏。この時期、日韓関係の緊張が高まっていました。読者の興味が一番ピークになった8月、その裏では米中貿易摩擦などの影響から日経平均株価は一時落ち込みましたが、その後、回復しました。なお、消費増税やそれに伴う軽減税率が始まったのはこの年の10月です。読者の興味がピークになっていた8月の記事はこちらです。
- 韓国・8月15日、文在寅大統領の退陣要求集会には、安倍政権批判集会以上が参加か (ニューズウィーク日本版)
- 安倍首相の判断ミス…輸出減少は韓国1兆ウォン、日本5兆ウォン (中央日報)
- 日韓の緊張状態いまだ冷めやらず 安倍政権の「外務省外し」が呼んだ弊害 (AERA dot.)
2020年2月 全小中高に臨時休校要請
2020年は、それまでとは比べ物にならないほど大きな読者の興味が安倍政権に向けられます。最初に関心が集中したのは2月。新型コロナウイルスが日本で本格的に脅威であるとアナウンスされた時期であり、安倍政権は、同月末に全国の小中学校や高校に対して臨時休校要請を発しました。
- 安倍首相、全小中高校に臨時休校要請 新型肺炎、立法措置も (時事ドットコム)
- 10日間で第2弾の緊急対策=新型ウイルスで安倍首相 (ロイター)
- 千葉市長、安倍首相の臨時休校要請に「千葉市は、小学校低学年を中心に預かる方向」 (ハフポスト)
2020年4月 緊急事態宣言
過去3年間のうち、最大の関心が寄せられた4月5日。この日は、安倍政権が緊急事態宣言を発令した2日前です。宣言発令が急速に現実味を帯びてきたことにより、ユーザーの間で一気に関心が高まりました。ここに至るまでに、日経平均株価は3月中に記録的な下落幅を見せ、2万円を割って大きく低迷していました
- 安倍首相、緊急事態宣言へ 東京など検討、新型コロナ感染急増で (時事ドットコム)
- 安倍晋三首相が着用の「アベノマスク」、布製から不織布に変わる (スポーツ報知)
- 全国民が唖然…「マスク2枚」で完全に露呈した安倍政権の「闇」 なぜ誰も止めなかったのだろうか (現代ビジネス)
2020年5月 賭けマージャンやTwitterデモ
5月下旬が読者の興味がピークとなり、これ以降落ち着きを少しみせています。興味のピークで多く読まれた記事を見てみると、なぜこれ以降興味が下がったのか見えてくるかもしれません。ちなみに、この時期は緊急事態宣言解除もあり、日経平均株価は次第に回復していきました。
- 安倍内閣、06年に賭けマージャンは賭博と閣議決定 (日刊スポーツ)
- 安倍首相が電話会談で沈黙した「トランプ大統領の要求」 (Forbes JAPAN)
- 黒川検事長辞職で安倍政権「もう持たない」 ツイッターデモで深まった政治不信 (AERA dot. )
2020年7月 「Go To トラベル」
辞意発表の前月となる7月下旬は、Go Toトラベルが話題でした。政府による景気刺激策である「Go Toキャンペーン」。7月は関連記事に多くの読者の興味が集まった一方で、日経平均株価が押し上がった様子は見られません。
- フジテレビ・平井文夫上席解説委員、「GoToトラベル」に「安倍政権はどれだけバカにされてもGoToキャンペーンは続けざるをえない」 (スポーツ報知)
- 東京五輪1年延期は安倍晋三首相の独断 来夏開催は絶望的… (AERA dot. )
- 経済活動「慎重に再開」 GoTo開始で安倍首相 (時事ドットコム)
まとめ
直近3年の安倍政権に関するSmartNewsの読者の興味と出来事をおさらいしました。いかがだったでしょうか。
今後もまだ大きな影響が出続けることが予想されるコロナ禍の日本、そして世界。外部指標も組み合わせて読者の興味を観察することで、また違った見方ができるのではないでしょうか。
著者紹介
和田 のぞみ (わだ・のぞみ)
スマートニュース株式会社 メディア事業開発
より快適に媒体社様がSmartNewsへ記事配信ができるようサポートや分析を担当。
Webエンジニアからの媒体運営、広告代理店と、インターネットに関わるペインを解決すべくキャリアを重ねてきた。とにかくインターネット好き。
本記事の分析は、SmartNewsアプリでの掲出アルゴリズムとは一切関係ありません。