年末恒例のSmartNews内での閲覧傾向の分析。本稿では、2020年のニュースとトレンドを取り上げます。
新型コロナウイルス(COVID-19)の出現によって、突然、それまでの日常が失われた2020年上半期。そしてパンデミックの猛威に対し、徐々に人々が新しい生活様式を実践するようになっていった下半期。強烈な印象を残した1年でしたが、そのインパクトは記事と読者の関係をどう変えたのでしょうか。
2020年1月〜6月を上半期、7月〜11月を下半期としたとき、SmartNewsのユーザー動向が上半期と下半期でどう変わっているのか、記事に用いられたキーワードの傾向から分析してみました。
本稿は、良質なコンテンツとその担い手に贈るアワード『SmartNews Awards 2020』を記念して執筆しました。
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- 読者が興味はどう変わったか
- 届けられている情報はどう変わったか
- じっくり読まれている情報はどう変わったか
- Googleトレンドはどう変わっているのか
- 新しい生活様式は、ニュースの需要も変えてきているかも?
それでは早速具体的なデータと、その結果を考察します。
読者が興味はどう変わったか
より多くPVを集めた記事タイトルに用いられたキーワードを分析しました。上半期と下半期のワードクラウドです。
これらのキーワードをPV順でランキングにしてみると、このような形になります。
両半期とも、1位は予想通り「コロナ」となりました。ですが、その周辺のキーワードをみてみると違いも感じられます。
まず、上半期は「感染」や「緊急事態」「殺到」など、感染症に直接関係のあるキーワードが多く登場しているようです。
一方で下半期は、「コロナ」が一位であることは変わらないものの、「逮捕」「三浦春馬」「離婚」など、コロナとは関係なく世間を騒がせた出来事に関連する言葉が上位にみられます。
PVを「読者の興味」とすると、上半期はまさに「コロナに振り回された」というような印象を受けます。一方で下半期は、コロナ関連のキーワードだけでなく、ワイドショー寄りのキーワードが入ってきています。「離婚」「反響」などの言葉が注目を集めていることから、コロナ以前の日常の感覚が少し戻ってきているようにみえます。
届けられている情報はどう変わったか
PVは読者が興味をもった記事と捉えることができますが、一方で、メディアはどのような情報を届けようとしていたのでしょうか。「Deliver」という定義で情報の届けられ方をみてみましょう。
この記事でDeliverとは、多くの読者の目の前に情報が届いた状態とします。具体的には、タイトルが読む読まれないに限らず、読者の目に触れる回数(impression)が多かったキーワードをランキングにしました。つまり多くのメディアが同じキーワードを使って記事タイトルを作成し、読者にDeliverしたといえます。
このDeliverされた記事タイトルのキーワードを分解し、ワードクラウドにした結果がこちらです。
ワードクラウドから、impressionの多い順にランキングにしたものがこちらです。
上半期、下半期ともに多くのメディアが新型コロナに関するキーワードを使った記事でImpressionを集めていたことがわかります。下半期には「goto」がランクインしていることから、コロナで受けた経済ダメージの回復に関する記事も増えてきていることがわかります。
Deliverキーワードをみると、メディア全体が時期に合わせた情報を届けていたことがわかりました。
じっくり読まれている情報はどう変わったか
ここまで「ユーザーが興味を持った記事(PV)」と「メディアがDliverした記事(impression)」を見たのですが、ここで「じっくり読まれた記事」つまり滞在時間(Time Spent)が長い記事に含まれるキーワードをみてみましょう。
興味を持ってもチラ見、流し見、する記事もあります。また速報性の高い記事は、いち早く届けるため限られた文字数で記載されているため、読んでいる時間も短くなります。
そんな中、ユーザーが腰を据えてしっかり読む記事には、どんなキーワードが多く含まれていたのでしょうか。
ワードクラウドの結果がこちらになります。
これらのキーワードをスコアの高い順に並べたものがこちらになります。
上半期は、「日本では〜、韓国では〜、中国では〜」というような国単位で情報が詰まった記事が長く読まれ、下半期は韓国の大統領である「文在寅」という具体的な氏名がランクインしています。
ここでワードクラウドに再度ご注目ください。上半期は全体的にキーワードのサイズが「コロナ」以外、ほぼ同じくらいに見えないでしょうか。つまりこれは、「コロナ」というキーワード以外は、じっくり読む記事が人によってばらけたということです。「コロナ」以外に目立って大きなキーワードがないことから推測すると、多くの人がパンデミックという初めてのシチュエーションのなか、コロナ関連の記事以外はあまり目に入らない状態だったのかもしれません。
一方で下半期は、明確にキーワードが持つスコアの強弱がついているので、「多くの人がじっくり読んでいる記事には、共通のキーワードが登場する」と言えます。上半期に比べ、コロナについての記事に慣れて他の記事を読むようになったのか、コロナ疲れにより本来興味のあったトピックに戻ってきていたのかもしれません。
Googleトレンドはどう変わっているのか
ここまでの結果は、SmartNewsのデータを使ったものです。この結果をGoogleトレンドと比較することで、SmartNewsでのデータとGoogleトレンドでのデータにどんな違いがみえてくるのか調べてみます。
Googleトレンドでの「ニュース検索」の「注目」は、このように変化していました。上段が上半期、下段が下半期です。
同じくGoogleトレンドの「ニュース検索」の「人気」の変化です。こちらも同じく上段が上半期、下段が下半期です。
いかがでしょうか。Googleトレンドは「注目」や「人気」というデータ区分のため、SmartNewsで出した方法と明確に同じではありませんので一概には言えませんが、かなりSmartNewsと近しい部分があります。
新しい生活様式は、ニュースの需要も変えてきているかも?
「コロナ」という単語が突如大きな影響力を持ち、「マスク」が花粉症や風邪の時期以外でも注視されるようになった上半期。どの指標のデータを見ても、今までにないユーザーの情報摂取やメディアからの情報のDeliverの変化が存在しました。昨年、社会的事象とまで言われた「タピオカ」が話題になったときは、それでも他に「ラグビー」や「令和」などのトレンドキーワードが存在感を出していました。一方で今年は、トレンドキーワードの上位が「ほぼ全部コロナ関係」という、これまでに見たことのない様相でした。
一方で下半期は、上半期で登場したコロナ関係の言葉が引き続き大きな存在感で残ってはいますが、芸能ニュース関連のキーワードに関心が集まるなど、コロナ以前の”例年の傾向” が混ざったものになっているようにみえます。長くコロナという状況が続くことから、もしかしたら今後はこれが「情報発信と受信の新しい様式」になるのかもしれません。
興味のある方は昨年のもので同じように自社の発信した記事でキーワードクラウドを試したりGoogleトレンドを使って比較したり、また2021年になったら新しいデータを使って調べてみてください。きっと長いスパンでの違いや変化が気づけると思いますよ。
著者紹介
和田 のぞみ (わだ・のぞみ)
スマートニュース株式会社 メディア事業開発
より快適に媒体社様がSmartNewsへ記事配信ができるようサポートや分析を担当。
Webエンジニアからの媒体運営、広告代理店と、インターネットに関わるペインを解決すべくキャリアを重ねてきた。とにかくインターネット好き。
本記事の分析は、SmartNewsアプリでの掲出アルゴリズムとは一切関係ありません。