2019年に起きた大きなニュースといえば、4月1日の新元号「令和」の発表、そして5月1日の改元とそれに関わる数々の行事が記憶に残っていることと思います。30年ぶりの改元、しかも在位中の天皇陛下の「退位」という誰も経験したことのない事象。これをいったいどのように取り上げるべきなのか、多くの方が頭を悩ませたのではないでしょうか。
この記事では、そんな歴史に残る一大トピック「令和への改元」に関する記事が、どのようにSmartNewsの読者に読まれたかを振り返ります。全国的な出来事について記事を制作するときのヒントになれば幸いです。
本記事は、良質なコンテンツとその担い手に贈るアワード『SmartNews Awards 2019』を記念して執筆されました。 |
- 調査方法
- 「令和」関連記事、ラグビーよりも多かった?
- ところで「平成」は?
- 4月1日発表時は瞬間風速、5月1日改元時は多様性
- どんな人が読んでいたのか?
- GoogleトレンドとSmartNewsのトレンドが一致
- まとめ:「令和への改元」の読まれ方は……
調査方法
今回の分析では、「新元号」「令和」「改元」のいずれかをタイトルに含む記事を令和への改元に関連するコンテンツとみなし、調査対象としています。
- 期間:2019年1月1日〜11月30日(中でも、改元前後の3月25日〜5月31日)
- 対象:SmartNewsで閲覧された記事でタイトルに「新元号」「令和」「改元」のいずれかを含む記事
「令和」関連記事、ラグビーよりも多かった?
まずは、この1年を通して改元関連コンテンツがどのくらいSmartNewsで閲覧されたのかを調べてみました。
横軸が月、棒グラフがSmartNewsで読者が読んだ記事数、折れ線グラフが関連する記事を配信した媒体数です。
もっとも閲覧が多かった4〜5月の記事数は、合計約15,000記事でした。これは今年盛り上がったもう1つのトピック、「ラグビー」をタイトルに含む記事の9月半ば〜11月半ばの記事数約11,000に対し、およそ1.4倍となります。
記事数は6月のピークを境に落ち着くものの、その後も月間1000件前後を維持しており、「令和」という単語が世間的に定着していったことを伺わせます。10月に再度記事数が増えているのは、10月に行われた「即位礼正殿の儀」によるものと考えられます。
ところで「平成」は?
「令和」が一気に話題になったころ、おなじみの「平成」をメディアはどう扱っていたのでしょうか。同じように月間記事数と媒体数を数えてみました。
4月には「平成」をタイトルに含む記事が、同月の「令和」記事数7,730に迫る6,540記事でした。年初から改元にむけて「平成最後の」「平成を振り返る」といった平成を懐かしむ話題が盛り上がりましたよね。しかし5月以降はその数値も激減、すっかり「令和」の時代に移り変わった様子が見て取れます。
4月1日発表時は瞬間風速、5月1日改元時は多様性
続けて、「令和」がもっとも注目を集めた2つのタイミング、4月1日の「新元号『令和』の発表」と5月1日の「改元」時の記事の読まれ方に注目です。
滞在時間の推移と読まれた記事
上のグラフは、3月後半から5月末までにおける、改元関連コンテンツの読者の滞在時間の推移です。横軸が日付、縦軸が滞在時間で、特に滞在時間が長かった媒体の代表記事を挙げています。
まず全体を見ると、4月1日の「令和」発表時のほうが改元自体のタイミングよりも瞬間風速が強く、一気に読まれすぐに落ち着いていったことがわかります。5月1日の改元後は、発表時に比べれば滞在時間の減少が緩やかで、読者の関心が比較的長く続いたことがうかがえます。
この時期の記事の読まれ方の特徴としては、媒体や切り口に偏りがなく、非常に多様性があったことがあげられます。切り口の傾向としては、元号発表時は「令和」という新元号についての解説記事が中心、改元のタイミングは天皇陛下や皇室の様子を写真などで視覚的に見ることができるコンテンツに人気が集まりました。
「令和」発表日、PVのピークはいつ? どんな記事が読まれた?
もっとも注目が集まった4月1日に絞って、この日にどのようなタイミングでどんな記事が読まれたのかをもう少し深掘りしてみます。
グラフは、4月1日の分刻みのPV発生推移です。4月1日のPV発生のピークは午前11時48分。新元号「令和」の発表が午前11時42分なので、発表を受けての号外記事が送信されたタイミングでした。直後の山は昼12時の定時Push通知(※)で、その後夕方までに少し落ち着き、午後6時定時Pushのタイミングから再び継続的にクリックされています。
※定時Push通知:朝7時、昼12時、夕方6時、夜10時の1日4回、その日のニュースを読者にPush通知で送る仕組み。
この日もっとも読まれたのは、発表後すぐの速報記事『新元号は「令和(れいわ)」 「大化」から248個目』(毎日新聞)と、過不足なく読者の知りたいことをまとめた『新元号は「令和(れいわ)」万葉集から引用』(日刊スポーツ)でした。
これらの1位2位の記事は元号発表直後のお昼に配信されたものですが、3番目に読まれた記事は、夜の時間帯に配信された『「これは覚えやすい!」 “R18”が西暦→令和の変換に役立つと話題に』(ITmedia News)というSNS読者の反応をまとめた記事です。これは、時間帯的なピークを外した上でもユニークな切り口により読者の関心を集めることに成功した例と言えるでしょう。また、その他の上位記事にも、媒体独自の視点の取材に基づく丁寧な解説記事が目立ちました。
どんな人が読んでいたのか?
SmartNews全体の読者像と、改元関連のコンテンツを読んでいた層には違いがあるのでしょうか? それぞれの性別比率と年齢層を比較してみます。
SmartNews読者全体の男女比率は、ほぼ半分ずつ。以前は「SmartNewsは男性が多い」と言われていましたが、女性の読者もこの通り増えてきています。しかし、今回の改元関連コンテンツの読者に限ると、男性65.2%、女性34.8%と男性の関心のほうが高い結果となりました。
また年齢層を比較すると、SmartNews全体の平均と比べて20~30代の若い層が多くなっています。昭和の時代をあまり知らず、平成に青春時代を過ごした若者世代にとって、令和時代の幕開けは関心の引かれる出来事だったようです。SmartNewsのボリュームゾーンは40〜50代にありますが、確実に若い世代にも届くようになってきています。
全体的には女性にあまり人気がなかったように見える改元関連のトピックですが、月ごとの比率を見ていると特徴的な動きがありました。4月と5月の男女比率を比べてみたところ、4月の女性比率34.4%に対して5月は37.3%と、女性の割合が約3ポイント増えています。
この2つの違いは、記事の切り口の差です。5月の上位記事の中で、特に女性の比率が高かったのが『祝・令和の幕開け!美智子さまから雅子さまへ役割を伝承|ロイヤルバトンタッチアルバム』 (介護ポストセブン 5月1日)、『「令和元年」新天皇即位の1日を写真で振り返ると…』 (HuffPost Japan 5月1日)といった、「皇室の写真」を期待させるタイトルです。5月は4月の発表時よりも代替わりの行事により皇室の露出が高まったため、皇室ファンの女性の関心を集めることができたと言えるのではないでしょうか。
4月の段階から皇室関連を多数取り上げていたメディアの以下の記事が全期間を通しての上位20位内を複数獲得していることからも、SmartNews読者の中の根強い皇室人気がうかがえます。もちろん、こちらも女性読者が圧倒的多数でした。
『愛子さま「令和への決意」美智子さまに花束のサプライズ!』 (女性自身 4月3日配信)
『雅子さま 警備費も光熱費も削減!令和の“職住一体”新生活』 (女性自身 4月13日配信)
GoogleトレンドとSmartNewsのトレンドが一致
ここまでSmartNewsの中のデータを扱ってきましたが、最後に外のデータとの比較を見てみます。画像はGoogle トレンドを使用し「新元号」「令和」「改元」それぞれの日本での検索数の推移を調べたものです。
「令和」というワードが圧倒的に検索されており、インターネット全体としても発表の時に関心のピークが来たことがわかります。また、「令和」の検索トレンドのグラフの形とSmartNewsの滞在時間トレンドのグラフの形がほぼ一致。「インターネット読者の能動的な行動トレンド」と「比較的受動的な閲覧体験であるSmartNewsのトレンド」が同じ動きをする、興味深い結果となりました。
まとめ:「令和への改元」の読まれ方は……
- 4月1日の「令和」発表時に記事閲覧のピークが来た
- 読まれた媒体や記事には多様性があり、独自の切り口で解説を加えた記事の人気が高かった
- 読者はトピック全体では男性のほうがやや多かったが、皇室関連の写真コンテンツは圧倒的に女性に読まれていた
- Googleの検索トレンドとSmartNewsの閲覧トレンドがほぼ一致した
2019年は日本にとって、改元という大きな節目の年でした。そしてSmartNewsにとって2019年は読者数の増大にともない、様々な読者が偏り少なく存在する場へと成長を遂げる過程の年だったと言えそうです。独自の視点や切り口で書かれた良質なコンテンツが、それぞれの最適な読者と良い出会いを果たせるよう、今後も改善を続けていきます。
著者紹介
杉山 早(すぎやま・さき)
スマートニュース株式会社 メディア事業開発
コンテンツチームの作業フローの整備や、エンジニアと協業したアルゴリズムの改善・業務ツールの開発などを担当している。プロ競技ダンサー兼フリーランスの衣装デザイナーからスマートニュースという謎のキャリア。今も年に数着ドレスを作る。
本記事の分析は、SmartNewsアプリでの掲出アルゴリズムとは一切関係ありません。