Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

【ヒット商品で振り返るSmartNews2022】ヤクルト1000はアプリ上でどう読まれたのか?

スマートニュースでは、記事を配信くださっている媒体社の皆様にニュースレターを配信、ニュースアプリ「SmartNews」の閲読データに基づいた分析レポートなどをお送りしています。 今回は、ニュースレターの編成やユーザーによるSmartNews上の記事閲読行動の分析を担当する守顕大によるレポートをMedia×Techでも公開。2022年のヒット商品のひとつである「ヤクルト1000」にまつわる記事がどのように、どんなユーザーに読まれたかの分析をお届けします。

2022年のヒット商品と言われた際、みなさまの頭には何が思い浮かびますか。 ヤクルト1000やちいかわ、スプラトゥーン3など2022年も多くのヒット商品が生まれました。その中でも、ヒット商品筆頭格といえるヤクルト1000はSmartNews上でどのように読まれたのでしょうか。Google Trendsの挙動との違いは?記事のジャンルは?閲読ユーザー層は?など、調査してみました。

調査方法
  • 期間:2022年1月1日〜2022年12月31日
  • 対象:タイトルに「ヤクルト1000(Yakult1000・Y1000)」を含むSmartNewsで閲覧された全記事

余談ですが、Yakult100とY1000は別商品です。内容物は同じですが、そのパッケージや容量が少し異なります。ヤクルトの宅配センターやヤクルトレディ経由で販売しているものがYakult1000、小売店経由で販売しているものがY1000となります。

「ヤクルト1000」が読まれたピークは?

2022年を対象期間とし、「ヤクルト1000」がタイトルに含まれた記事本数とその記事から発生したPV (PageView) 数を月ごとに集計しました。現在、SmartNewsは3000以上の提携媒体から記事を配信いただいています。そのなかで、記事タイトルに「ヤクルト1000」を含む記事はおよそ450本でした(比較として2019年タピオカブーム時の「タピオカ」を含む記事がおよそ6000本)。

図1は、記事本数とPV数、検索キーワードの推移がわかる「Googleトレンド」の変化をグラフにまとめたものです。4月、5月と記事本数が増加し、6月に記事本数がピークを迎えると共に、PVもピークを迎えています。一方、緑線で示すGoogleトレンドは、記事本数およびPVと比較して4月にかけての増加幅が大きく、5月にピークを迎えています。

図1: 2022年を通して、SmartNews上の記事本数とPV数、Googleトレンドの推移 (それぞれの指標の最大値にて正規化)

図2は、それぞれの指標がピークを迎える5月と6月に焦点を当て、週ごとの挙動をグラフ化したものです。5月23日の週にGoogleトレンドと記事本数が急増していることが読み取れます。その一方で、PV数はその翌週の5月30日の週に急増し、ピークを迎えています。「ヤクルト1000」が最も話題となり、Google検索というユーザーの能動的な行動が促進するのと同時期に記事本数も充実していることが読み取れます。また、記事本数が充実した結果、アプリでの閲覧という受動的な行動が遅れて盛り上がったと考えられます。

図2: 2022年5月と6月におけるSmartNews上の記事本数とPV数、Googleトレンドの推移(それぞれの指標の最大値により正規化)

SmartNewsのピークは何によって形成されたのか?

これらの挙動の裏では何が起こっていたのでしょうか。SmartNews上での閲読行動の詳細を見ていきます。 図3は4月、5月に読まれた記事のタイトルで作成したワードクラウドです。4月には、テレビ番組内でマツコデラックスが愛飲していることが判明し、話題を呼びました。「マツコ」といった単語がワードクラウド上で大きく表示されており、実際にそれぞれの指標が増加した一因であったと考えられます。また、「レディ」や「結果」などが大きく表示されていることから、ヤクルトレディを話題とした記事や、ヤクルト1000を試した結果を報告する記事の割合が多いことも示唆されます。

図3: 4月と5月にSmartNews上で閲読された記事タイトルに基づくワードクラウド

6月のPV数ピークでは、記事ジャンルの構成に大きな変化あり 図4は、月間のPV数がTop3であった記事ジャンルの推移となります。

図4: 月間のPV数Top3であった記事ジャンルの推移

ここで起きた大きな変化は6月に経済ジャンルのPVが増加したことです。この背景として、品薄状態が続く中で、睡眠市場に焦点を当てた記事や高額転売を行う”転売ヤー”の存在に焦点を当てた記事、開発背景に焦点を当てた記事が増加したことが挙げられます。実際、6月6日には品薄状態が顕著となり、宅配サービスの新規申込みの休止が発表されました。また、6月17日には、メルカリが高額転売が相次ぐ「Yakult1000」と「Y1000」について、出品を削除していることを表明しました。

この一連の様子は、図5に示す6月に読まれた記事のタイトルで作成したワードクラウドからも読み取ることができます。

図5: 6月にSmartNews上で閲読された記事タイトルに基づくワードクラウド

10月にもGoogleトレンドに若干の山があり、SmartNews上の記事本数が増加しています。これは「ヤクルト1000」と同ジャンルの「ピルクル ミラクルケア」といった商品が発売された影響だと考えられます。ヤクルト1000とピルクルの効果を比較した記事が増加しましたが、PV数の増加はあまり見られませんでした。もしかすると、ヤクルト1000の生産体制強化が進んでいたことでユーザーは安心し、関心が次に向かっていたのかもしれません。

記事は誰が閲読したのか?

ヤクルト1000に関する記事の閲読傾向を振り返ってきましたが、いよいよ大詰めです。

そもそもヤクルト1000の記事はどのような層が読んでいたのでしょうか。前提として、SmartNewsのユーザーは、性別分布でおよそ男女半々です。年代は、40〜60代をボリュームゾーンとしつつも幅広い層に使っていただいています。 PV数の男女比率を図6に示します。

図6: PV数に占める男女比率の推移

1月を除いてヤクルト1000の記事は女性が多く閲覧していました。1月は、ヤクルトのマスコットキャラクターである「つば九郎」が、年俸5万円とヤクルト1000飲み放題で残留するというニュースが話題に。そのため、記事数自体少ない中で、スポーツジャンルの記事が主になり、男性が多く閲読したと考えられます。

参考: 『つば九郎 100件超のオファーも…年俸5万円とヤクルト1000飲み放題で残留!ドアラが代理人で登場』(スポニチ Sponichi Annex)

PV数の年代比率を図7に示します。

図7: PV数に占める年代比率の推移

SmartNewsのユーザー層を考えると、5月時点で20代と30代の閲読割合は高いといえます。6月には50代と60代の閲読割合が増加しました。 話題がピークを迎えた5月時点では、流行りに敏感な10代と20代の閲読を促したことが考えられます。一方、記事本数の充実化や経済ジャンル記事の増加が進んだ6月には、ボリュームゾーンである50代と60代が多く閲覧するようになったことが推測できます。

まとめ

  • ニュースアプリでの閲読という受動的行動の特性か、PV数はGoogleトレンドと記事本数から一週遅れてピークを迎えた
  • ヤクルト1000に注目が集まる中で、睡眠市場や開発背景、高額転売など経済にまつわる記事も増加し、PV数を牽引した
  • 女性の閲読割合が高いという傾向は継続しつつ、記事数や記事ジャンルの変化に伴って年代比率は変化した

ヤクルト1000に限らずヒット商品に関わる記事は、切り口を変えながら意外と長く読まれます。基本的にはヒット商品の体験に関する記事が土台となり、経済的関心を含んだ記事によって読者層を拡大することで閲覧数も増大します。ヒット商品に対する経済的な観点が増え始めて世間の認知度が高まったタイミングが、独自の視点で読者の関心を引く良い機会かもしれません。

毎年、特定のきっかけを経て話題となり、爆発的にヒットする商品が生まれます。2023年は果たしてどのような商品がどのようなきっかけでヒットするのでしょうか。なにかヒット商品が出た際、2022年の「ヤクルト1000(Yakult1000・Y1000)」がどう読まれたかをぜひ思い出してみてください。

著者紹介

守 顕大(もり・けんた)

守 顕大

スマートニュース株式会社 事業開発部

2022年にスマートニュース株式会社に新卒入社。事業開発部のメディアグループに属し、媒体社様とのコミュニケーションを担当する。入社以前は、大阪大学大学院工学研究科にて光を使ったがん治療の研究に従事していた。読書、サッカー、旅行が好き。