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「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

分析の呼吸! 国民的ブームはいつから? 「鬼滅の刃」のどんな記事がどの年代に読まれたか

年末恒例のSmartNews内での閲覧傾向の分析。本稿では、2020年に最も注目を集めたアニメ作品「鬼滅の刃」を取り上げます。10月に公開された映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は最短で興行収入100億円を突破。原作のコミックスは累計1億部を突破し、 12月には最終話を収録した23巻も発売しました。

本記事では、SmartNewsで「鬼滅の刃」がどのような記事で各年代での認知を得たのか、読者の閲覧動向から分析。また「『鬼滅の刃』の次に流行る」と言われている作品の閲覧傾向も分析しました。

本記事は、良質なコンテンツとその担い手に贈るアワード『SmartNews Awards 2020』を記念して執筆しました。

  • 調査期間:2019年12月〜2020年11月15日
  • 調査対象:SmartNewsで閲覧された記事でタイトルに「鬼滅の刃」を含む全4万2000記事

 

2020年、「鬼滅の刃」の閲覧傾向

2019年末から緩やかに上昇傾向が続き、週刊少年ジャンプでの最終回掲載(2020年5月)でピークに達します。その後、10月16日の映画公開から、興行成績や関連する話題で閲覧数が増え続けています。

 

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記事カテゴリの割合の推移

f:id:sotakaki_sn:20201211133241p:plain鬼滅の刃の大半の記事はほとんどがエンタテインメントカテゴリですが、ブームが広がるとともに、様々なカテゴリの記事が書かれたことがわかります。 

特に作品に関連する話題の記事(BUZZ)や、コラム(COLUMN)が増えています。

年代順で閲覧傾向をブレイクダウン

年代順の閲覧数のグラフです。

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それぞれに特徴がありますが、10代と20代、30代と40代、50代と60代がそれぞれ似た傾向があります。

また、年の離れた10代と60代を比較すると興味深い結果となりました。10代は最終回がジャンプに載るまで緩やかに閲覧数が伸び、映画公開から緩やかに閲覧数が減少しています。

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対照的に、60代の閲覧傾向はジャンプでの最終回はそれほど大きなインパクトにはならず、コミックの発売時期をのぞくと映画公開まであまり大きな変化がないように見えます。

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こうしたことからもわかるように、昨年来の「鬼滅の刃」は、どちらかというと若者中心の流行でした。映画の公開以降、60代も巻き込んだ「国民的ブーム」になったのではないでしょうか。

年齢層別の注目閲覧記事は?

それではここからは、各世代ごとに、よく読まれた記事の傾向を具体例とともに紹介していきます。

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10代:芸能人のコスプレが話題

原作マンガやアニメに関する記事がよく読まれるなか、芸能人のコスプレを取り上げた記事が話題になっていました。一般の人もコスプレするハロウィーンのシーズンなどは特に大きな盛り上がりがありました。

20代:コミックス盗難の記事が読まれる

ある入浴施設にて、『鬼滅の刃』コミックスのセットが盗難にあったという騒動について書かれた記事が関心を集めました。

盗難にあった施設のツイートでは、主人公・竈門炭治郎のセリフを引用する形で、警察には通報せずSNSで犯人にコミックスの返却を呼びかけたこと、その結果実際に返却されたことが書かれており、多くの共感と見られる4万超のリツイートが集まっていました。

30代:考察コラムに注目

作品の登場人物やセリフについての考察や、「鬼滅」ブームについて言及したコラム記事の閲覧が目立ちました。こうした考察コラムは、滞在時間も長くシェア数も多い傾向がでました。

40代:親子で楽しめるコラボ商品に関心集まる

さまざまな業種とのコラボに触れた記事がよく読まれていました。親子で楽しめるコラボ商品への関心の高さが、40代の閲覧傾向から伺えます。

50代:“鬼滅の名所”へGo To トラベル

全国各地に誕生した“鬼滅の名所”に言及する記事の閲覧が目立ちました。Go To トラベルの期間に入ったことの影響も大きいと考えられます。株式会社アイディエーションの調査によれば、Go To トラベルの利用者数割合がもっとも高い世代は「50代男性」とのことです。

60代:菅首相「全集中の呼吸で答弁」

ブームは国会にも拡がり、菅総理の発言が注目を集めました。また映画のヒットに対し、加藤官房長官や西村再生相も関連する発言をしました。60代のユーザーの閲覧傾向からは、こうした政治家の発言への関心を見てとることができます。

以上のように、世代ごとによく読まれている記事を見ていくと、各世代で異なる切り口の「鬼滅」関連記事が注目されていることがわかります。若年層の支持を基盤としつつも、企業とのコラボや観光戦略、芸能人や政治家といった著名人の関連発言などが盛んにメディアに取り上げられ、広い世代に関心のフックを提供する形となりました。メディアによるこうした積極的な言及が、全世代の「鬼滅の刃」認知を高めたのではないかと考えられます。

”ポスト「鬼滅の刃」”2作品の勢いは? 「呪術廻戦」「チェンソーマン」

「鬼滅の刃」と同じく「週刊少年ジャンプ」で連載中の「呪術廻戦」と「チェンソーマン」。この2作は、「ポスト『鬼滅の刃』」とも囁かれる人気急上昇中の作品です。ここではSmartNewsで読まれている両作品の記事の傾向をみてみました。

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両作品とも今年の5月以降に閲覧数が増加トレンド。コミック発売が進むたび、トレンドが大きくなっています。「呪術廻戦」はアニメシリーズのBlu-ray&DVD購入特典のお知らせ、「チェンソーマン」はコミック9巻発売のプロモーション動画がピークになりました。

2021年1月にも続きのコミックが出ることもあり、まだまだ両作品とも勢いは続くとみています。

まとめ

鬼滅の刃の閲覧傾向は、

  • 2020年に入ってから週刊少年ジャンプでの最終話が掲載されたタイミングがもっとも閲覧数が多く、映画公開のタイミングに続く。
  • 年代別でのピークの違いがわかりやすい。10代は最終回までに緩やかに上昇し、60代は映画公開以降に。
  • コスプレ、企業コラボ、政治家の発言など、さまざまな記事により幅広い世代への認知につながった。

さて、来年はどのような作品がブレイクするのでしょうか。来年のエンタメ業界の動向を楽しみに2021年を迎えたいと思います。

www.mediatechnology.jp

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著者紹介

有野 寛一(ありの・ひろかず)

有野 寛一

 

スマートニュース株式会社 メディア事業開発

前職ではSmartNewsAwardsを受賞した週刊アスキーのWebプロデューサー。その知見を活かした媒体社様とのコミュニケーションを担当する。大手ポータル、SNSでの経験から情報発信と受信に課題を持ち現職へ。インターネットで流通するニュースが好き。

本記事の分析は、SmartNewsアプリでの掲出アルゴリズムとは一切関係ありません。