年末恒例のSmartNews内での閲覧傾向の分析。本稿では、2020年に最も注目を集めたアニメ作品「鬼滅の刃」を取り上げます。10月に公開された映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は最短で興行収入100億円を突破。原作のコミックスは累計1億部を突破し、 12月には最終話を収録した23巻も発売しました。
本記事では、SmartNewsで「鬼滅の刃」がどのような記事で各年代での認知を得たのか、読者の閲覧動向から分析。また「『鬼滅の刃』の次に流行る」と言われている作品の閲覧傾向も分析しました。
本記事は、良質なコンテンツとその担い手に贈るアワード『SmartNews Awards 2020』を記念して執筆しました。
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- 2020年、「鬼滅の刃」の閲覧傾向
- 記事カテゴリの割合の推移
- 年代順で閲覧傾向をブレイクダウン
- 年齢層別の注目閲覧記事は?
- ”ポスト「鬼滅の刃」”2作品の勢いは? 「呪術廻戦」「チェンソーマン」
- まとめ
2020年、「鬼滅の刃」の閲覧傾向
2019年末から緩やかに上昇傾向が続き、週刊少年ジャンプでの最終回掲載(2020年5月)でピークに達します。その後、10月16日の映画公開から、興行成績や関連する話題で閲覧数が増え続けています。
記事カテゴリの割合の推移
鬼滅の刃の大半の記事はほとんどがエンタテインメントカテゴリですが、ブームが広がるとともに、様々なカテゴリの記事が書かれたことがわかります。
特に作品に関連する話題の記事(BUZZ)や、コラム(COLUMN)が増えています。
- 凄まじいクオリティの「鬼滅の刃」黒板アート 美術教師が卒業生へのエール込め全集中で描き上げる(2020年3月3日)|BIGLOBEニュース
- 「鬼滅」でダイドー缶コーヒーが大ヒットの事情 | 東洋経済オンライン
年代順で閲覧傾向をブレイクダウン
年代順の閲覧数のグラフです。
それぞれに特徴がありますが、10代と20代、30代と40代、50代と60代がそれぞれ似た傾向があります。
また、年の離れた10代と60代を比較すると興味深い結果となりました。10代は最終回がジャンプに載るまで緩やかに閲覧数が伸び、映画公開から緩やかに閲覧数が減少しています。
対照的に、60代の閲覧傾向はジャンプでの最終回はそれほど大きなインパクトにはならず、コミックの発売時期をのぞくと映画公開まであまり大きな変化がないように見えます。
こうしたことからもわかるように、昨年来の「鬼滅の刃」は、どちらかというと若者中心の流行でした。映画の公開以降、60代も巻き込んだ「国民的ブーム」になったのではないでしょうか。
年齢層別の注目閲覧記事は?
それではここからは、各世代ごとに、よく読まれた記事の傾向を具体例とともに紹介していきます。
10代:芸能人のコスプレが話題
原作マンガやアニメに関する記事がよく読まれるなか、芸能人のコスプレを取り上げた記事が話題になっていました。一般の人もコスプレするハロウィーンのシーズンなどは特に大きな盛り上がりがありました。
- 弘中綾香アナ『鬼滅の刃』竈門禰豆子コスプレに初挑戦「レベルが違う」と絶賛集まる | ふたまん+
- なかやまきんに君、『鬼滅の刃』伊之助のコスプレに大絶賛の声「実写に向けての役者が1人決まったな」 | 耳マン
20代:コミックス盗難の記事が読まれる
ある入浴施設にて、『鬼滅の刃』コミックスのセットが盗難にあったという騒動について書かれた記事が関心を集めました。
盗難にあった施設のツイートでは、主人公・竈門炭治郎のセリフを引用する形で、警察には通報せずSNSで犯人にコミックスの返却を呼びかけたこと、その結果実際に返却されたことが書かれており、多くの共感と見られる4万超のリツイートが集まっていました。
- 『鬼滅の刃』20冊が盗まれた入浴施設 後日、犯人から届いたものとは | grape [グレイプ]
30代:考察コラムに注目
作品の登場人物やセリフについての考察や、「鬼滅」ブームについて言及したコラム記事の閲覧が目立ちました。こうした考察コラムは、滞在時間も長くシェア数も多い傾向がでました。
- 『鬼滅の刃』を見た東大生が「我妻善逸こそ最も優秀である」と考える理由 | 日刊SPA!
- 大ヒット『鬼滅の刃』、若者に刺さりまくった「炭治郎の一言」をご存じか?| 現代ビジネス
40代:親子で楽しめるコラボ商品に関心集まる
さまざまな業種とのコラボに触れた記事がよく読まれていました。親子で楽しめるコラボ商品への関心の高さが、40代の閲覧傾向から伺えます。
- 【鬼滅の刃】カルピスとセットのマグカップ全種揃えたい!ローソンへGO。| 東京バーゲンマニア
- 「鬼滅の刃」の「峠の釜めし」予約販売開始。炭治郎/禰豆子/善逸/伊之助/杏寿郎の5種類 「鬼滅の刃×SLぐんま~無限列車大作戦~」| トラベル Watch
50代:“鬼滅の名所”へGo To トラベル
全国各地に誕生した“鬼滅の名所”に言及する記事の閲覧が目立ちました。Go To トラベルの期間に入ったことの影響も大きいと考えられます。株式会社アイディエーションの調査によれば、Go To トラベルの利用者数割合がもっとも高い世代は「50代男性」とのことです。
- 「鬼滅の刃」ファン、善逸になりきりポーズ 奈良の葛木坐火雷神社が話題に | 毎日新聞
- 〝鬼滅の聖地〟別府をPR 観光客誘致へ動画を撮影 | 大分のニュースなら 大分合同新聞プレミアムオンライン Gate
- 鬼滅じゃないよ「滅鬼」地区だよ…「行ってきた」とタレントの投稿が話題に : 社会 : ニュース | 読売新聞オンライン
- 鬼滅の刃で炭治郎が切った大岩手作り 鯖江市の男性、建設現場の廃材フル活用 | 社会,催し・文化 | 福井新聞ONLINE
60代:菅首相「全集中の呼吸で答弁」
ブームは国会にも拡がり、菅総理の発言が注目を集めました。また映画のヒットに対し、加藤官房長官や西村再生相も関連する発言をしました。60代のユーザーの閲覧傾向からは、こうした政治家の発言への関心を見てとることができます。
- 菅首相「全集中の呼吸で答弁」 鬼滅の刃、ついに国会へ|朝日新聞デジタル
- 「鬼滅」大ヒット「コロナ禍の映画産業に貢献」 加藤官房長官 | 産経ニュース
- 「マスクして楽しんで」 「鬼滅」ヒットで西村再生相|時事ドットコム
以上のように、世代ごとによく読まれている記事を見ていくと、各世代で異なる切り口の「鬼滅」関連記事が注目されていることがわかります。若年層の支持を基盤としつつも、企業とのコラボや観光戦略、芸能人や政治家といった著名人の関連発言などが盛んにメディアに取り上げられ、広い世代に関心のフックを提供する形となりました。メディアによるこうした積極的な言及が、全世代の「鬼滅の刃」認知を高めたのではないかと考えられます。
”ポスト「鬼滅の刃」”2作品の勢いは? 「呪術廻戦」「チェンソーマン」
「鬼滅の刃」と同じく「週刊少年ジャンプ」で連載中の「呪術廻戦」と「チェンソーマン」。この2作は、「ポスト『鬼滅の刃』」とも囁かれる人気急上昇中の作品です。ここではSmartNewsで読まれている両作品の記事の傾向をみてみました。
両作品とも今年の5月以降に閲覧数が増加トレンド。コミック発売が進むたび、トレンドが大きくなっています。「呪術廻戦」はアニメシリーズのBlu-ray&DVD購入特典のお知らせ、「チェンソーマン」はコミック9巻発売のプロモーション動画がピークになりました。
- 『呪術廻戦』五条悟がアイマスクを外した姿がイケメンすぎる!さっそくBlu-ray&DVD購入特典ビジュアルに | PASH! PLUS
- 『チェンソーマン』の公式PVがどうかしてる!?中毒性ある動画に再生が止まらない|numan
2021年1月にも続きのコミックが出ることもあり、まだまだ両作品とも勢いは続くとみています。
まとめ
鬼滅の刃の閲覧傾向は、
- 2020年に入ってから週刊少年ジャンプでの最終話が掲載されたタイミングがもっとも閲覧数が多く、映画公開のタイミングに続く。
- 年代別でのピークの違いがわかりやすい。10代は最終回までに緩やかに上昇し、60代は映画公開以降に。
- コスプレ、企業コラボ、政治家の発言など、さまざまな記事により幅広い世代への認知につながった。
さて、来年はどのような作品がブレイクするのでしょうか。来年のエンタメ業界の動向を楽しみに2021年を迎えたいと思います。
著者紹介
有野 寛一(ありの・ひろかず)
スマートニュース株式会社 メディア事業開発
前職ではSmartNewsAwardsを受賞した週刊アスキーのWebプロデューサー。その知見を活かした媒体社様とのコミュニケーションを担当する。大手ポータル、SNSでの経験から情報発信と受信に課題を持ち現職へ。インターネットで流通するニュースが好き。
本記事の分析は、SmartNewsアプリでの掲出アルゴリズムとは一切関係ありません。