Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

集客「グッと増えた」 コロナ禍でオンラインイベント急拡大、準備や運営のコツは――オンラインイベント実践術

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コロナ禍でリアルイベントの開催が難しくなる中、オンラインイベントへの注目が集まっている。Media×Techブログでは4月13日、「メディア運営者のためのオンラインイベント実践術」と題し、そのノウハウやメリット、課題について議論するZoomイベントを開催した。

登壇したのは、アイティメディアでオンライン/フィジカル(オフライン)双方のセミナー運営を統括する滝沢渚さんと、イベントの集客管理ツール「Peatix」運営企業・Peatixの白勢竜彦さん。司会進行はスマートニュースの藤村厚夫フェローが務めた。

コロナ禍で集客「グッと増えた」 高役職者の参加率高まる

滝沢さんが所属するアイティメディアは、主催イベント・スポンサー提供イベントを含め、月間40〜50本ほどのオンラインイベントを手掛けているという。視聴者数は30人〜5000人程度と規模はさまざま。プラットフォームには、同社が販売するオンラインイベントプラットフォームである「ON24」を使っている。

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「今、オンラインの参加意欲が本当に高い」と滝沢さんは言う。「3月の半ばぐらいからどんどん集客しやすくなって、4月からグッと増えた。当社が定期的に行ってきたイベントも、従来は登録者が100人台後半だったのが、今週やったものは500〜600人ぐらいの登録があった」(滝沢さん)

同じ企画でオン・オフ両方で行った場合は「オンラインの方が高役職者が多く、参加者も多い」傾向があるという。多忙でフィジカルイベントに行けない役職者も、「オンラインで1時間だったら、ちょっと参加してみようって思われるケースが多いのではないか」と滝沢さんは推測する。

アイティメディアでは、コロナ禍が表面化してきた2月、ホテルで開催予定だった800人規模のイベントを、1週間前に急きょオンライン移行した経験もあるという。講演者にはホテルに来てもらい、計437分のイベントを無観客で実施。参加者の歩留まりは「8割ぐらい」と高く、「ずっと見ていて下さった」と滝沢さんは振り返る。

 

“恐怖の無音”を防げ! 事前準備がキモ

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オンラインイベントには回線や機材などのトラブルがつきものだ。事前に入念なリハーサルを行い、Wi-Fiやマイク、カメラなどの環境をチェックしておくことは必須だと2人は同意する。「ネットワークの問題が、一番クレームにつながりやすい」(滝沢さん)。過去のイベントでは「Wi-Fiが混線して音声が途中で途切れ、5分間無音になってしまう」という恐怖を、滝沢さんは経験したという。

回線トラブルを防ぐために滝沢さんは、「有線LANをおすすめしている」という。「無線はどうしても途切れてしまうことがあるので、瞬間的に声が聞こえなくなるトラブルが絶対起きる」ためだ。有線LANが使えない場合は、講演は事前収録してしまい、質疑応答だけライブ、という選択をすることもあるという。マイクも「できれば有線でPCにつなぐのがベスト」だ。

イベント開催に当たっては、「チームを作って役割分担する」ことも重要だと白勢さんは言う。スタッフ同士も遠隔で作業するケースも多いため、音声面・技術トラブルに対応するスタッフ、質問に対応するスタッフなどを分担し、チャットでやりとりしながら進めるイメージだ。

PCも「分ける」ことが大事だという。例えば、講演資料を投影するPC、講師の映像配信用PC、音声配信用PCをすべて分けるといった形だ。分けておくことで快適な視聴環境を維持し、トラブルが起きても切り分けやすくなる。「ヒューマンエラーは絶対起こる」という前提で、入念に準備することを滝沢さんはすすめる。

準備段階で、目的を明確にしておくことも重要だ。アイティメディアが主催したマーケティング目的のイベントの場合は、登録数や視聴率、視聴からのアンケート回答数などをトラックし、1回のWebセミナーで何人アポを取り、案件化するかまでKPIにしているという。このKPIはフィジカルイベントと同じだそうだ。

視聴中の離脱を防ぐことも重要で、投票機能が有効だという。「視聴者の課題を講演者がその場で見ながら方向性を変えることもでき、講演の精度が上がるし、視聴者も“参加してる感”があって盛り上がる」(滝沢さん)

PeatixがYouTube Liveで開催したイベントでは、チャット欄で感想や質問を受け付けた。白勢さんによると、ファシリテーターがリアルタイムでチェックして登壇者に質問する、といった「オンラインならでは」のやりとりで盛り上がったという。

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「オンもオフと同じ価格」ビジネスとして高いポテンシャル

オンラインの場合、フィジカルイベントより低料金というイメージもあるが、滝沢さんが運営してきた、スポンサー付きの無料イベントの場合、スポンサー費は据え置きか、むしろ高額になることもあるという。

「この4月〜6月のオンラインイベントの実績を見ていると、オフラインの時よりも問い合わせも案件数もどんどん増えてる。オンラインだから無料だったり安くなるはずだ、という概念は実はそこまで強くない。参加者数を増やせれば、むしろ高くしてもいいと思う」(滝沢さん)

また、あえて有料イベントにすることで「良質なお客さんを呼び込むことにもつながる」と、白勢さんは言う。

今がチャンス

会社で「オンラインイベントをやりたい」と提案しても、上の許可が下りない——視聴者からのそんな悩みに、2人は「問題を切り分けるべき」と回答する。

「課題はセキュリティなのか、フィジカルを置き換えることの抵抗感など、気持ち的な問題なのかなど問題を切り分けて、会話するしかない。同業他社の事例が効くので、事例が出るまで待つケースも多い」(滝沢さん)

白勢さんは「オンラインイベントを行わないと、売り上げが下がって倒産する企業もある。それでいいのか?」と投げかけ、「今がチャンスだ」と述べた。

 

なお、Media×Techブログでは第2回「メディア運営者のためのオンラインイベント実践術」も8月6日15時に開催予定。GoogleやSlackの担当者をお招きして、元BuzzFeed Japanの創刊編集長である古田大輔さんがお話を聞いていきます。こちらもお楽しみに。