Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

独断と偏見:2020年、Media×Techブログ編集部員のおすすめコンテンツは?

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2020年もいよいよ大詰め。Media×Techブログも1年間ご覧いただき、ありがとうございました。コンテンツジャンキーぞろいの編集部(と一部執筆陣)の面々が、独断と偏見おすすめコンテンツを選んでみました。年末年始にぜひご覧ください。

2020年 これだけは読んで/見て/遊んでおきたいコンテンツは何?

 

How a Massive Bomb Came Together in Beirut’s Port(New York Times)www.nytimes.com

通常の動画でも、アニメーションでもなく、Webならではの動的な表現を完成させていた。「ビジュアル調査報道」として、記念碑的な完成度。(編集部・藤村厚夫)

 

2020年に印象に残った記事という意味では個人的には レバノン・ベイルート港の大規模爆発事故を伝えるニューヨークタイムズの記事がダントツでした。縦スクロールでのニュース解説において記憶にある中だと現段階でこれが一番完成されている気がします。

ビジュアルと解説によって極めてわかりやすく、新たな形式の解説記事としては好例。制作の工数はかかると思いますが、こういった体験はニュースに没入できるので、ニュースにもっと興味を持ってもらうために子供たちにも見てもらいたい、そんな記事でした。 (編集部・山﨑俊彦)

ふたつのアメリカ - 大統領選2020 分極社会(朝日新聞デジタル)

www.asahi.com

ビジュアル調査報道は日本のメディアでも取り組みが始まっています。今年は米国の大統領選挙が話題になったこともあり、朝日新聞のこんなチャレンジに注目しました。とても見やすく、そして、シンプルに読みやすい作りでスマホでもスイスイ読めるようになっています。(編集部・三木鉄也)

ウイグル自治区における報道(BBC、ABEMA)

www.bbc.com

 

abema.tv (有料です)

 

今年は特に一歩踏み込んだウイグル自治区における調査報道が目を引きました。触れるメディアが少ない中、恐れることのない切れ込んだ調査報道を行っていたと思います。例に挙げたのはBBCとABEMAです。BBCでは番組(動画)の中で駐英中国大使に鋭い質問で追求し続けたのも印象的でした。(山﨑)

キノコード / プログラミング学習動画のYouTuber

www.youtube.com

これまでYouTubeはどちらかといえば、若い人にウケるものが多かった印象ですが、ビジネスマンでも楽しめるコンテンツがここ1年ほどで増えた印象です。このキノコードは無料でも非常に質が高いプログラミングを学べます。メンバーシップ(有料)を始めたのですが、これまでどおり無料で閲覧することが可能です(2020年12月23日現在)。(編集部・有野寛一)

監視資本主義(Netflix)鬼滅の刃(漫画、アニメ、映画)AFTER DIGITAL VER.2(書籍)夜に駆ける(音楽)

監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影

kimetsu.com

www.nikkeibp.co.jp

youtu.be

「監視資本主義」はプラットフォーマーの企業倫理に関わる内容で、メディア業界人は閲覧必須。「鬼滅の刃」はマンガ、テレビ、映画それぞれの媒体種類別での受容のされ方の違いが面白い。「AFTER DIGITAL VER.2」はデータドリブン社会の本質について考えるヒントになる。「夜に駆ける」は小説と音楽の掛け合わせという新鮮さが目を引いた。(編集部・荒牧航)

田中宗一郎さんと宇野維正による『2010s』

www.shinchosha.co.jp

これを読んでから、20年代を迎えるにあたって最大最長の積み残し作品だった『Game of Thrones』とMCU作品に一気に取り掛かれました。(佐々木大輔)

The Crown 第4シーズン(Netflix)

 ザ・クラウン

エリザベス女王の一代記。今年公開された第4シーズンはチャールズとダイアナの「あらかじめ裏切られた結婚」がメインテーマ。史実に基づくけれど、もちろん巧みにフィクションで盛り上げている。さて、ここで質問。自分がNetflixから日本のロイヤルファミリーでシリーズドラマをつくってと頼まれたらどうしますか。そもそも受けない?取材はどうする?誰が演じる?どのエピソードをとりあげる?どこを虚構に仕上げる?ーーなんてことを考え始めると、今年騒がせた皇室の課題からメディアのタブーまでが頭の中をぐるぐるする。Barなら朝まで議論できそう。良質なエンタメは、好奇心と想像力を刺激する。(瀬尾傑)

「コンテイジョン」(2011年公開:監督: スティーブン・ソダーバーグ)

warnerbros.co.jp

2020年はコロナと切っても切り離せないと思って選びました。コンディションという映画では初春から夏にかけて私たちの世界で「起きていたこと」を、そしてワクチンが開発されて普及が始まるまでの「これから起こるであろう」近い未来のことなどが描かれていて、そうなって欲しくはないけど、最悪の事態というものが起きたら、どうなってしまうのか感じることができました。コロナ前に作られたものなので、数年前に見たときは、こんなことは起こり得ないと思いましたが、いまや割と近い状態なので答え合わせをしているような状況ですね(映画ではもっと致死率が高いウイルスが描かれています……)。(三木)

「インターステラー」(2014年公開:監督: クリストファー・ノーラン)

warnerbros.co.jp

ネタバレにならない程度に書かなくてはですが、地球上の空気(酸素)が少なくなる世界で、人類が生きるために新たな星を探しに行くという話なのですが。こう危機的な状況での生き方を描いている点では2020年にみるにふさわしいだろうなと思ってます。世界や世の中の他のみんなのためにどう生きるか、愛する家族のためにどう生きるべきか。など、良きテーマだなと思っています。(三木)

ブラック・ミラーは全部示唆的でいいけど特に「ランク社会」

ブラック・ミラー シーズン3 ランク社会

ランク社会はスマホを通じてドラゴンボールのスカウターのようにその人の点数(ランク)が分かる社会を描いたもの。ランクが上がれば飛行機のチケットが取りやすくなったりと待遇がよくなる一方、ランクが下がればチケットが取れないどころか、色々な不具合に見舞われます。信用経済が話題になったのは今年というわけではないですが、コロナ禍にあってますます人と合わないとネット上での見え方が全てになってしまうように感じる今、ネット上だけの評判で人を判断してしまっていないか、考えさせれました。(編集部・鷹木創)

マンガは「イムリ」が終わってしまった

comicbeam.com

地球とは別の惑星で、支配階級と被支配階級に別れた三つの種族が愛憎交えながら相克していく物語。いわゆるヒーローが出てきて全てを解決する(下手をしたら死んだキャラクターまで生き返らせる)ようなストーリーではなく、人間のエゴや割り切れなさなどが思う存分楽しめるマンガです。2006年から楽しんできましたが、2020年8月に終わりまして、鷹木も少しイムリロスになりました。(編集部・鷹木)

ゲームはPS5(の触覚コントローラーを試してみるべき)

www.playstation.com

いまだに品薄が続いているPlayStation 5。なんとか抽選に当たって購入できたら、ぜひ触覚コントローラー(DualSense ワイヤレスコントローラー)を試してみてください(無料で遊べるゲームも付いてきます)。コントローラー本体そのものが多様なパターンで振動するのと、トリガー部分の重さがゲームの状況によって変わります。たったこれだけなんですけど、それだけでキャラクターが氷の上をツルッと滑って転んだり、砂浜の上を疾走する際のザラザラ感などを表現できるので、臨場感が半端ないです。もちろんVRの行き着くところからしたらまだまだ途上なんでしょうけど、これはこれで楽しいなあ、と思いました。(編集部・鷹木)

Last of us 2

store.playstation.com

謎の感染爆発によって崩壊寸前のアメリカを舞台とした、ロードムービー的なゾンビゲームです。コロナ禍だからこそ推したい気持ちは全く無くて、普遍的に素晴らしい作品だと思いました。物語の大半は、ゾンビ的な存在よりも、人間と戦うほうが多いです。普通に生活していたら、殺したいほど誰かを憎むこと、復讐してやろう、さらにはその感情や意志への葛藤を持つことはなかなかないですが、ゲームを通してそれを体験することができます。日常のふとした瞬間に、本、音楽、映画の一節やシーンが心をよぎることがありますが、このゲームもその中の一つになりました。(編集部・高野政法)

LIFESPAN

book.toyokeizai.net

老化を病気だと捉え直し、そして病気であるがゆえに治療できると解説している本です。トンデモのようにも、サイエンスフィクションのようにも聞こえるかもしれません。ただ、いまは当たり前のワクチンも、考え直してみれば、異常な行為だとも言えます。病気にかからないように、病気のウイルスを体に入れるというのは、過去はなかなか受け入れ難かったのではないでしょうか。これが常識になったのは、人の価値が転換したからで、そう考えると、これから老化は病気であると価値転換する可能性もあり得ます。

 

確かに色々と不安な世の中ですが、このまま順調に医療が発展していけば、寿命はどんどんと伸びていき、我々の子どもたちの世代では平均寿命が200歳になる可能性すらあります。そのときには、いま社会を構成しているあらゆるものが変わらなければ持続しないだろうと思います。少なくとも、自分が予想以上に長生きしてしまう可能性もあるので、心身ともに長く健康であるように、今から努力しておこうと思いました。(高野)



本気のしるし(漫画、劇場版)

csbs.shogakukan.co.jp

www.nagoyatv.com

星里もちるさん原作の、2000年の恋愛漫画。深田晃司監督によって2019年にドラマ化、総集編が劇場で上映されました。カンヌ映画祭への出品が決まり、2021年1月に東京でも再上映予定です。

 

私は劇場版を機に知ったのですが、青年漫画でありがちな「全ての男性を虜にしてしまうヒロイン」というのを、「悪女」ではなく「愛されずに育ったために、他者の押し付けを断れない女性」として描いており、それが2000年の時点で明確に意識されているのがとても意義深い作品です。深田監督はそれをさらに#MeTooを意識して映像化しており、2020年にふさわしいコンテンツに翻案されていました。ちなみにメディア業界における#MeTooに関していえば、FOXニュースでのハラスメントを告発した実話に基づく「スキャンダル(Bombshell)」も非常に面白かったです。(編集部・平松梨沙)

 

レイモンド・ウィリアムズ『テレビジョン』

www.minervashobo.co.jp


テレビ論の古典が、今年静かに翻訳されて刊行されてたので買ったものの、まだ読みかけなので読み切っておきたい。副題は「テクノロジーと文化の形成」。展開の早さについて、いかに映るかと政治についてなど、なるほど古びないメディア論。ウィリアムズのドラマに対する熱量もすごい。ドラマといえば来年は『俺の家の話』『今ここにある危機とぼくの好感度について』がとにかく楽しみ。(谷村友也)

ジョン・ケージ「4分33秒」

www.youtube.com

皆さん、リアルのやりとりではない、一方向の、ともすればフィルターがかかった情報を浴び続け、すっかりお疲れになった1年だったのでは?(というか、私は疲れました)。

 

完全なるスクロール中毒を断たねばということで頭に浮かんだのがこちら。たった4分数十秒であっても、年末年始は電子的な何かから離れ、“自分の神経系が働いている音”と“自分の血液が流れている音”のみを聴き、気づけばグルグルとした思索と創造の始まる時間の豊かさに身を委ねたいと思います(同じ文脈で、彫刻家・内藤礼氏が今年刊行した“はじめての言葉による作品集”『空を見てよかった』も、雪が降る音を聞くかのような美しい言葉の並びが素晴らしく、オススメ)。(加藤小也香)

www.shinchosha.co.jp

 

2021年はどんなコンテンツに期待する?

  • ライブストリーミング。(藤村)
  • Work from Home(WFH)になり、自分ひとりで仕事をする時間が増えたこともあり、聞きながら仕事をできることもあって、ビジネス系のコンテンツがより多く増えると思います。(有野)
  • 特にこれといって絞らないので、全方位的に注目してますが、強いて挙げるとすると音声。ラジオは10年以上聴いてますが、今年ほどラジオを聴いた年はなかったです。コロナ禍の中でWFHになり、ながら聴きが当たり前になった今、改めて、ラジオおよびPodcastで面白い番組いっぱいあるなぁと強く感じました。来年も面白い音声コンテンツと沢山出会いたいです。(山﨑)
  • VRの英会話でも試してみようかなと思っています。(荒牧)
  • スローなコンテンツ。短絡的でない思考を促すもの。あと個人的には、日常と非日常を架橋するもの。ウイルスに関わらず、気候変動や紛争など、何らか非常事態下に置かれることが当たり前になり得ると感じており、そんな中でも人生を見失わず、日々、明るくサバイブするための希望、コンテンツを求めたいし、発信していきたいと思っています。(加藤)
  • まずは『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を見て、それから考えたいと思います。(佐々木)
  • そろそろ、日本の広告も変わってほしい。実は、2020年、最もオススメのコンテンツとしてあげようと迷ったのは、ナイキのCM「動かしつづける。自分を。未来を。 The Future Isn’t Waiting. | Nike」。カンヌ広告賞では主流になっている社会問題を正面から取り上げるCMが、日本でも当たり前になってほしい。広告コンテンツがもっと愛されるためにも。だから、2021年は日本の社会課題告発型広告に期待します。(瀬尾)
  • ポジティブな、元気や希望を持つことができるようなコンテンツが出てくることを期待してます。(三木)
  • VR(と毎年言っている)。(鷹木)
  • これまで興味を持った本を乱読してきたので、2021年は特定のテーマで深堀りして読むということを行ってみようと思います。(高野)
  • 女性クリエイターの作品がもっと世界的に評価されてほしいです。(平松)
  • 真面目に調べ続けたら、結果として面白くなっちゃったというもの。(谷村)

本記事は筆者と編集部の独自の取材に基づく内容です。スマートニュースの公式見解ではありません。