Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

AMP Conf 2019から見えてきたGoogleの次なる戦略

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こんにちは、Publication Networkチームの田島です。Publication Networkプロジェクトのプロダクトマネージャーと、SmartNewsに蓄積されるユーザーとコンテンツデータの分析を担当しています。

今回はそのAMPについて私たちも深く理解するため、4月17日、18日に開かれたAMP Conf 2019、およびその前日に開かれたAMP Conf for Publishersに参加してきました。そこで感じたGoogleの狙いとAMPの広がりをお伝えします。

「AMP Conf 2019」(出典:amp.dev)

 

AMP Confとは

AMP Confとは、今年3回目を迎えるAMP開発者のための年次カンファレンスです。前回はアムステルダム、今回は東京で開かれました。

AMP(Accelerated Mobile Pages)とは、Googleが中心となって推進するオープンソースのWebフレームワークです。従来のHTMLの技術で蓄積されたベストソリューションをフレームワーク化し、モバイル環境でも高速にWebページが表示できる仕組みを提供します。 

AMPによって広がるGoogleのエコシステム

AMPの特徴は、モバイルで高速表示できることだけではなく、機械が理解しやすいフォーマットでコンテンツを記述する必要があることです。従来のHTMLよりも構造化されたコンテンツデータが提供されることにより、Googleは検索結果上でリッチにコンテンツを表現するだけでなく、検索以外のサービスでもコンテンツを扱いやすくなります。

 

2000年代、多くのユーザーにとってインターネット上のコンテンツは「検索語句」を入力して初めて接するものでした。2010年代になりSNSが台頭し、ユーザーは「検索語句」ではなく「ともだち」を通してインターネットに触れられるようになります。さらにスマートフォン時代に入り、特定の目的のアプリをタップしてインターネットに接触するようになり、検索サービスの利用割合は徐々に減少していきました。実際に、スマートフォン利用時間のうち、Webブラウザの割合は2014年7月に28%だったものが、2018年7月には15%まで減少しています(参考資料12)。

検索とそれによる広告の表示が収益の中心であるGoogleは、このトレンドに対応し、ユーザーが詳細な「検索語句」を入力しなくても快適にインターネットに接することのできるサービスに力を入れていくと考えています。そのために、高速表示によって検索サービスの体験を向上させることはもちろん、構造化されたコンテンツによって検索サービスを拡張していくことが必要でしょう。

また、5Gへの移行が現実的になってきたヨーロッパ、北米、東アジア地域とは裏腹に、そのほか多くの国で、通信速度が十分ではありません。特に世界で2番目に大きな人口を抱えるインドも通信速度が低く、こういった国ではAMP対応し、高速化することがそのままビジネス的に大きなインパクトを生みます。Googleの調査によると、ユーザーはWebページを開く際に最初の3秒で53%が離脱してしまいます(参考資料)が、AMPに対応することでその離脱率を大幅に下げることができます。 

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「The State of LTE(February 2018)」(出典:OPENSIGNAL)

現在のユーザーのニーズを捉え、構造化され、かつ高速化されたインターネット体験を主導することで、Googleはインターネットの入り口としての立ち位置を強固にしていくのではないでしょうか。

 

AMPは新時代のSEOとなるか

GoogleはAMP開発コミュニティーを主導していますが、Google検索のアルゴリズムで有利に評価されると発表しているわけではありません。しかし、モバイルでの検索結果においてAMPのみ表示するウィジェットを上部に配置していることから、AMPに対応していないWebサイトがまだ多い現在は、AMP対応によってSEO上のメリットがあると期待できます。

 

特に、GoogleはAMP Storiesを検索結果に表示することを発表しました。AMP Storiesとは、AMPで作ることのできるストーリー形式のコンテンツフォーマットです。ストーリーフォーマットは、テキスト、画像、動画を組み合わせて全画面でコンテンツを体験できる特徴があり、Instagramを筆頭に様々なサービスで採用され始めています。Google検索もこのフォーマットを検索結果の上部に表示することを発表したため、これに対応することでユーザーの目に触れやすくなり、インプレッションを増やす効果が期待できそうです。 

 

カンファレンスでは、このAMP Stroriesを簡単に制作する下記のようなツール群も公開されました。

https://makestories.io/

 

AMPだけでWebサイトが作られる世界へ

また、カンファレンスでは、AMPページを表示した際もオリジナルサイトのURLが表示されるSXG(Signed HTTP Exchanges)に対応することが発表されました。

従来、Google検索結果からAMPが表示される際には、URLに関して下記二つの問題がありました。

  1. ユーザーのブラウザで、オリジナルサイトのドメインではなく、GoogleのキャッシュURLが表示される
  2. ユーザーのブラウザで、Googleのコンテンツと認識されるためキャッシュの受け渡しができない。そのために正確なアクセス解析が難しい

SXGに対応することによって、ユーザーのブラウザはAMPをオリジナルサイトのドメインで表示できるようになり、キャッシュを使ったパーソナライズサービスや正確なアクセス解析を実現できるようになります。ただし、現在は対応しているブラウザはChromeと一部のブラウザのみです。

 

また、AMPには自由にJavascriptを書けないという制約がありましたが、amp-scriptタグによってカスタムJavascriptも動かせるようになりました。

 

AMPはもともとコンテンツクリエイターが記事を発信する際に最適なフォーマットを目指して立ち上がりました。現在は、上記のようにWebサイト制作者の様々なニーズに応え、記事に限らずあらゆるWebサイトがAMPを利用できるようにすべく開発が続いています。最終的には、オリジナルサイトとAMPのペアではなく、WebサイトがAMPだけで作られ、高速に表示される「AMPファースト」を目指しているとの発言がありました。

 

さらにAMPは、PWA(Progressive Web Apps)と組み合わせることで、よりユーザーエンゲージを高めることが期待できるそうです。PWAは、AMPとは別に開発が進んでいるWebフレームワークで、オフラインでの閲覧、プッシュ通知、ホーム画面へのアイコン追加といったアプリのような体験を実現するものです。カンファレンスでは、個別の記事をAMPで、Webサイト全体をPWAで構築する「PWAMP」というトレンドが紹介されました。

 

AMP対応で広告収益の増加も

AMPが広がる中、AMP上でネットワーク広告を表示するための、AMPHTML Adsという収益化手段が提供されています。これはAMPのみで動作する広告ではなく、通常のHTMLでも動作するAMPフレームワークによる広告です。AMPHTML Adsを使うことでAMP上で収益化できるだけでなく、従来よりも高速に表示できることでユーザーが広告を目にする機会が増え、収益性が向上することが期待できるとのことです。

 

インドを代表する英語紙のTHE TIMES OF INDIAではAMP対応により収益が50%増加した事例が、国産DSPのLogicadではCTRが12%増加、CPAが11%減少した事例が紹介されていました。そして、Googleのディスプレイ広告でも、すでに全体の12%がAMPHTML Ads経由のものとなっています(2018年はわずか1%でした)。

 

まとめ:AMPをどう考えれば良いか

AMP Conf 2019ではAMP開発コミュニティーからだけでなく、AMPを導入したWebサイト・企業からパフォーマンスが向上した事例を聞くことが出来ました。ユーザーの体験を改善するベストソリューションが詰まったAMPに対応することで、コンテンツをより多くの人に届けられる可能性があると期待できます。

しかし、AMPは今まさに開発が急速に進んでいるプロジェクトであり、対応するためには下記のような努力をする必要があると思いました。

  1. 日本語の情報ソースが少ない中で、開発コミュニティーとやり取りすること
  2. AMPの仕組みを理解し、エンジニアの学習コストを払うこと
  3. AMPへの切り替えと新しい収益化について社内の理解と合意を取ること

 

 

著者紹介

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田島将太(たじま・しょうた)。東京大学卒業。シリコンバレーでセンサー開発に従事。その後2016年、スマートニュース株式会社にジョイン。メディアパートナーとのアライアンス、およびデータ分析を担当した後、メディアパートナーに対する新プロジェクトを推進。現在、スマートニュースにて、Publication Networkプロジェクトのプロダクトマネージャーを務める。

本記事は筆者と編集部の独自の取材に基づく内容です。スマートニュースの公式見解ではありません。