Media × Tech

「Media × Tech」ブログはスマートニュースのメディア担当チームが運営するブログです。テクノロジーを活用した次世代のメディアとはどういうものか? そうしたメディアをどうやって創り出していくのか、を考えていきます。

急成長フェーズの採用変革 「誰もが創作」技術で支え (2)note【デジタル人材戦略】

HR Leaderの北上愛さん(左)と、CTOの今雄一さん

HR Leaderの北上愛さん(左)と、CTOの今雄一さん

デジタルメディアが定着して久しいが、めまぐるしく技術が進歩する時代に組織をアップデートし続けるのは容易ではない。テクノロジー人材の獲得、定着に向けた文化醸成、成長への動機付け。難課題に対峙する各メディアに人材戦略を聞いた。

■「テレパシーで伝わると思っていた」

個人がコンテンツを投稿でき、読者とつながるメディアプラットフォーム「note(ノート)」は、2019年9月、2000万MAU(*1)を突破した。運営するのはピースオブケイク。加藤貞顕代CEOの下、続々と有能な人材が集まる中、2016年からCTOを務めるのが今雄一さんだ。社員65人のうち、半数近くを占めるエンジニア組織全体を統率している。

(*1)MAU:月間アクティブユーザー数。月1回以上サービスを利用したユーザーを指す。

今さんが入社した2013年9月、会社規模は10人程度でこのうちエンジニアは4人。クリエイターたちのコンテンツを配信する「cakes(ケイクス)」が先行して人気を集めており、「note」は開発前夜とも言える時期だった。 

翌年4月に「note」をローンチ。2016年ごろから、有名クリエイターの「note」上での成功が注目され始める。2017年秋に深津貴之CXO(Chief eXperience Officer)が就任以降、ユーザ数はさらに急上昇。2019年1月には、MAUは1000万人を超えるところまで成長していた。さらなる飛躍へ、今さんの人材獲得意欲も高かったが、それでもエンジニア数は14人。ブランド戦略も奏功し、エンジニアは少しずつ増えていたが、開発リソースが、成長にまったく追いついていなかった。

「会社の魅力はテレパシーみたいに伝わると思っていた。採用戦略が何も分かっていなかった」(今さん)。社内に、採用活動のプロフェッショナルがいなかったのだ。

■“自分ごと”にする求人票

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2019年1月、複数のIT企業で採用から研修まで幅広い経験を持つ北上愛さんがピースオブケイクに参画した。

ゼロから構築する必要があった」と、北上さんは入社当時を振り返る。「母集団形成(*2)がしっかりできていなくて(ターゲットに)リーチできていないというのが最初の印象。テレパシーで通じるとかではなく(笑)、言葉で伝わるよう土台を固めていった」

(*2)母集団形成:採用活動を広く認知してもらい、自社の求人に興味や関心を持つ求職者を集めること。

北上さんは、奇をてらうわけではなく、地道な改善を進めていった。求人情報サービス「Wantedly」上の会社情報を充実させたり、社員が知人をリクルートする際のランチ費用の補助制度を導入したり、求人票を細分化したり、自社のカルチャーが伝わる記事をnoteで発表したりといった具合だ。

「以前は『エンジニア』という1種類の求人票しかなかった。それを『フロントエンド』『サーバーサイド』『インフラ』『マシンラーニング』と細かく分けることによって、エンジニアの皆さんに“自分ごと”に感じてもらえるように求人票を作成した」(北上さん)

細分化するだけで、ピースオブケイクが開発をすべて内製化している会社であることが示される。「(応募の)数は段違いで伸びた」。今さんはその変化に驚きつつ、CTOとして、新たにジョインしてくる仲間たちと組織作りに取り組んでいく。

■成長を実現する3チーム

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現在、「note」の成長を実現する開発チームは大きく3つに分かれる。基盤(長期)、機能開発(中期)、カイゼン(短期)の3チームだ。 

今さんによると、3チームは別々の目標を持っており、働き方にもそれぞれ特徴がある。例えば、カイゼンチームはデザイナーらとクイックにすり合わてUIを調整したり、機能を微調整する機会が頻繁に発生するため、対面でのコミュニケーションの方が効率が良い。

一方、基盤チームは、仕様を満たすべく精緻な実装やモニタリングといった集中力を要する作業の比重が大きく、リモート勤務にも適している。 

「3チームのリソースは均等割を目指しており、各人の適性に合わせて、本人の希望を聞きながら配置している」と今さん。事業戦略にかなった開発体制であると同時に、多様な働き方にも組織的に対応しているのだ。

■能動的な提案を優先

「法人向けの『note pro』やコミュニティが手軽に作れる『サークル』など、より攻めた機能開発も増えてきたし、noteのMAUがここ数カ月ですごく伸びている。皆が使うサービス、インフラとして使われるサービスにしていきたい」と、より高い視座での成長を狙う今さん。必然的に、大規模トラフィックをさばいた経験や、多数のCtoCトラブルに対処してきた経験、BtoBのSaaSプロダクトの開発経験、開発組織のマネジメント経験のある人材獲得に焦点が当てられていく。

開発やオペレーション効率の向上、UXの向上につながる提案は大歓迎で、まずはやってみるという姿勢を大切にしている」。多種多様なスキル、バックグラウンドの人材が集まる中、培ってきた経験を生かそうとする各エンジニアの前向きな姿勢を今さんは尊重している。

一方で、エンジニアたちの共通意識にもぶれはない。ピースオブケイクの価値観を明確に打ち出し、共感する人材を採用しているからだ。すなわち「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」のミッションと、「クリエイター視点で考えよう / Creator First」をはじめとする一連の価値観だ。「noteに書いておくと、何か良いことが起こるように、エンジニアチームは、クリエイターの“サクセス”を技術で支えていく」。今さんは、そう力強く語った。

(取材:Media×Tech編集部)

 

www.mediatechnology.jp

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著者紹介

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荒牧航(あらまき・わたる)

スマートニュース株式会社コンテンツアソシエイト。慶應義塾大学文学部卒業、千葉日報社にて記者、経営企画室長、デジタル担当執行役員を歴任。日本新聞協会委員としても活動後、2019年9月にスマートニュース株式会社へ参画。中小企業診断士としてメディアコンサルティング等にも携わる。

本記事は筆者と編集部の独自の取材に基づく内容です。スマートニュースの公式見解ではありません。